円城塔の中にいる伊藤計劃。伊藤計劃をインストールした円城塔。
表現の仕方はさておき、円城塔のSF作家としての底しれぬ力量を感じさせる傑作で、年代設定的にも、「虐殺器官」と「ハーモニー」を巻き戻したような、意識のない屍者に纏わる物語です。「その先」を書こうとして、結果的にいい意味で原点に戻っているように思えました。
伊藤計劃が残したプロローグからの移行部分である第一部は風呂敷を広げていくところでちと展開スピードに不満も感じましたが、第二部以降はまさに一級のエンターテインメントであり、あんな人やこんな人が最後までいろいろ出てきて、さらに世代的にエヴァンゲリオンを彷彿とされるギミックが散りばめられた、ザ・サイエンスフィクションと言える作品です。
エピローグを読みながら、この話が終わってしまうことが残念でならなかったですが、そのエピローグで、伊藤計劃の残した「呪い」を開放したことに、円城塔の想いを読み取りました。そして、物語はプロローグ前の引用に繋がります。小学校に読んだ記憶って意外と保持されているものですね。
複数の言葉に支配された、物質化した情報のひとつとして、そう思います。
The second phase, or a curse, of the Project Itoh comes to settle happily.
But, the Project will continue, and never end.
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
Science Fiction
- 感想投稿日 : 2012年8月27日
- 読了日 : 2012年8月27日
- 本棚登録日 : 2012年8月25日
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