輝ける闇 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1982年10月27日発売)
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感想 : 115
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シエスタ・読書・中国将棋・映画、はてはぶらり町歩きと、当初は従軍記者(正確には朝日新聞社の臨時特派員)とは思えない比較的のんびりとした前線生活だった。このまま著者の身に何も起こらず、一生ついて離れないような記憶が植え付けられないよう願ったが、神様は容赦がなかった。

生まれて初めて握る銃の感触にそこから湧き上がる感情。(自分にとっては教科書でしか聞いたことがなかった、)枯葉剤で荒廃した林を踏みしめる著者と部隊。銃撃戦に怯える著者が敢えてしたためた森の匂い。生々しい文体は決して読者を怖がらせる訳ではない。戒めている。

「しかし、私は、やっぱり、革命者でもなく、反革命者でもなく、不革命者ですらないのだ」

高みの見物と言わんばかりに世界各地から押しかけ取材がてら町で遊ぶ記者達を目の当たりにすると、嫌でも現在と重なってしまう。おいそれと非難なんぞ出来ず、かける言葉すら浮かばない。著者が作中感じたもどかしさが自ずとシンクロした。


何の予習もせぬまま突入したため、本書が三部作の第一作目である事を最中に知りました。

筆者と行動を共にした大尉は作中で「われわれは(中略)、東南アジアを守るために戦ってる。日本と我々自身を守るためにも戦ってる」と言っていましたが、自分はもっと間近にある日常を守りたいと思っています。
「世界最後の日に何を食べたいか」といった質問をよく耳にしますが、やっぱり世界最後の日など想像すらしたくないですし、想像する暇があれば幸せだと思えている日常を可能な限り永続させる方を自分は取っていきたいです。

熱くなってしまいましたがこの久々に湧いた熱意を掲げ、時間をかけてでもニ・三作目に挑みます。まだ、いささか野次馬気味だった筆者の心境の変化もしかと見届ける所存です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年2月26日
読了日 : 2022年2月26日
本棚登録日 : 2022年2月26日

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