エーリヒ・フロム『自由からの逃走』の議論の流れに則りながら、全体主義を可能にした歴史的・社会的条件を確認している内容。
関連する思想家・学者の論(ルターやフロイトなど)も多く引用しており、世界史的な知識の補足も多くあり、前提知識が少なくても読みやすい。
主に西洋近現代の話題だが、所々で現代日本に引き寄せた解説も入れてくれていて、その点も読みやすい。
『自由からの逃走』自体については、引用はまあまあ多いが要所要所だけ。
『自由からの逃走』を深掘りする系統の本ではなく、それを取り巻く諸議論を概観できる書籍。
所々で「詳しくはこっちも読んでね!」的に著者の別著書を参照するようにお薦めされるのが、上手だしなんか可愛い。
(メモ)
["自己否定"して、より大きなものの一部になったつもりになることで、不安を解消しようとする](p67)は、「時間や労力を既に投資していると、投資し続けることが損失だと分かっていても『元を取りたくて』後に引けなくなる」サンクコスト効果(コンコルド効果)で強まる面もあるのかなと思った。
同章のカルヴァン派の話題[努力できるということ自体が、自分が救われた人間に属していることの一つの前兆](p77)でも上記と同じことを感じた。
[不安を一時期に忘れるために、勉強や仕事に必死に打ち込む](p78)は自分もやりがちなので、心に留めておこうとも思った。
[不心得者を糾弾してやりたいという強い衝動ゆえに、"道徳にうるさい潔癖症的な人間"を演じる、あるいは、実際そういう人間になり切る人がいる](p82)もとても身につまされる。
ネット上の「無断転載」「パクリ」で叩いたり炎上させたりする人の心理もこれに近い場合がありそうだと思ったが、[かなり安易な形で拡張したもの](同)と説明があった。
- 感想投稿日 : 2022年2月4日
- 読了日 : 2022年2月4日
- 本棚登録日 : 2022年2月4日
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