第5回小学館ライトノベル大賞・ガガガ大賞受賞作。
児童文学『オズの魔法使い』に着想を得た、4人の男女の青春物語。
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彼氏にフラれた女子校生・三浦加奈は、飛び降りるために学校の屋上へと向かう。屋上に張り巡らされた金網を登り、死のうとする彼女の前に、奇妙な3人組が現れる。お互いを『オズの魔法使い』の登場人物になぞらえ、ライオン、カカシ、ブリキと呼び合う彼ら。「復讐」という目的を果たした後、彼らも自殺するつもりだという。ドロシーとして迎えられた加奈と3人の、屋上での不思議なスクールライフが始まった…。
勇気のないライオン、知恵のないカカシ、心のないブリキ。次第に明かされていく3人の暗い過去とつながり。加奈が持ち前の無鉄砲さで彼らの事情に首を突っ込み、彼らを、そして死ぬ気でいた自分自身をも変えていく、美しき青春ジュブナイル。
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【良かったところ】
・死にたいと強く願っている加奈だが、蓋を開けてみれば残りの3人の抱える状況・過去の方が陰鬱に見えて、「そんな簡単に死にたいなんて言うんじゃないっ」というメッセージが聞こえてきそうだ。また、いつの間にやら加奈が他人の死を思い止まらせる側になっているという変わりように、彼女の心の成長が見えて清々しい。
・読者は「身に詰まされる」と物語に引き込まれるという話を聞いたことがあるが、本作はライオン・カカシ・ブリキのエピソードをしっかり暗く描き、読者の共感を呼ぶことに成功していると思う。しかし、最後はやはりハッピーエンドなので読後感も爽やかで、きれいにまとまった青春小説だと言える。
・キャラクターがどれも良い。特に、ブリキは本作のもう一人の主人公ではないかといえるほど目立つ。加奈がブリキのガチガチな厭世観を見事変えた最後のシーンは素晴らしい。二人のやり合いもコミカルで微笑ましい。
・「ソラ」という重要人物と、ライオン・カカシ・ブリキそれぞれが好きな青空、茜空、星空を掛けているところも気に入っている。
個人的にライオンのエピソードの切り上げが早いような…、と不安に思ったが、その後の章でしっかり彼と周囲の変化について拾っていたのでおkです。
いや、中高生読むべし!な作品だった。
復讐も自殺も何かを良い方向に変えるには万全の策ではないと教えられる。
- 感想投稿日 : 2013年1月6日
- 読了日 : 2013年1月5日
- 本棚登録日 : 2013年1月5日
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