会社を変える分析の力 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社 (2013年7月18日発売)
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ビックデータの時代である。インターネットが日常不可欠のインフラとなり、IoTによりすべての機器がネットにつながる。コンビニではPOSで顧客情報を収集し、amazonを初めとするネット通販は増える一方だ。膨大な情報量のデータがネットに溢れる。そんな時代に「データアナリスト」なる職業が脚光を浴びている。著者は、このデータアナリストであり、大阪ガスの情報通信部ビジネスアナリシスセンターの所長だ。大阪ガスに限らず、大きな企業にはデータ分析を担当する専任部署を設けている会社も多いようだ。

大阪ガスという巨大企業で一貫してデータ分析を行う部署で働いてきた著者には、「データ分析が実際のビジネスにどう活かされたか」という視点が強くある。著者の言葉を借りると「データ分析に関する哲学」のようなものを体系化してまとめたものが本書だそうだ。

なるほど、著者がデータ分析を行う際に自問自答することにも、その哲学が垣間見える。
1.その数字にどこまで責任を取れるか?
2.その数字から何がわかったか?
3.意思決定にどのように使えるのか?
4.ビジネスにどれくらい役に立ったか?

データ分析を担う間接部門で仕事をしてきたからこそ、企業活動における意思決定に、どのように活用されたかを強く意識するのだろう。

こんな感じの本書なので、どちらかというと、データ分析における「心掛け」や「陥りやすい罠」の部分が多いかなと思う。

技術面でボクがなるほどと思った部分は、「ビックデータの本質」についてだ。著者によると、データ量が増えただけではビックデータ旋風(ビックデータによるイノベーション)は説明できないという。単純にデータ量が増えるだけなら、分析精度は向上するかもしれないが、イノベーションにはならない。喩えるなら、包丁の切れ味がよくなるくらいでは、料理はスムーズにできても、斬新でイノベーティブな料理は生まれないことと同じ。著者はこの疑問が解けずに悶々としていたが、手にした一冊の本が疑問を解消してくれたそうだ。

『Big Data:A Revolution That Will Transform How We Live, Work, And Think』にはこう書いてある。「ビックデータの本質は、部分計測から全体計測への移行」だと。「部分計測から全体計測」になると、「因果関係から相関関係への追及」に変わるという。従来は、大量のデータを扱えなかったので、母集団の一部をサンプリングして全体を統計的に推定していたが、ビックデータを扱う現代は、母集団全てを計測できる。つまり、対象とする母集団の一部ではなくて、100%母集団を扱えている。従来は、部分を計測することで、全体の減少を支配する普遍的な法則(因果関係)を見出し、部分から全体の減少を理解しようとしたが、ビックデータの時代は、母集団すべてを扱うので、部分から全体を理解する必要はない。扱っているものが全体であるため、部分から全体を推定する必要はない。つまり、ビックデータ=対象とする世界そのものなのだ。この場合、相関関係が

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カテゴリ: ビジネス
感想投稿日 : 2017年4月25日
本棚登録日 : 2017年3月25日

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