源氏物語 巻二 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2007年2月10日発売)
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感想 : 40
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 やっと第二巻。有名な、というか自分がわりと覚えている女性たちがたくさん出てきて賑やかだった印象。
 藤壺の出家を受け茫然自失となる源氏を見て、出家ってどんなことなのだろうと疑問に思ったが、巻末の「源氏のしおり」、寂聴さんによる解説を読んで、少し理解が深まった。それだけでなく、出家を決意するに至るまでの藤壺の葛藤とその描き方や、出家後の藤壺が意外と強い女性に変貌していくことについての指摘もとても興味深く、寂聴さんのおかげで藤壺への認識が改まった。

 以下自分用メモ。

■末摘花(源氏十八歳)
・頭中将とのライバル関係が楽しい。夕顔の子を引き取る算段までしている源氏は密かに優越感を持っている。
・手引きする命婦が「浮気っぽく軽率な性分」と説明され妙に存在感がある。
・こんなに末摘花のことを見苦しい見苦しいと、この章は何のためにあるのかわからない。夕顔は良かった、空蝉は良かった、若紫かわいすぎ、かわいすぎて六条御息所のところ行く暇ないわと。なんやねん。

■紅葉賀
・藤壺、葵のそれぞれ。葵パパは源氏に甘いが、それでいいのか。
・若紫「それじゃあ私は夫を持っていたのね」って。ちゃんと説明しろよなー。
・十二月の予定だったのが二月に生まれた。やはり自分の子だと思う源氏。
・また頭中将との張り合い。六十歳近い源の典侍(ないしのすけ)をめぐって…。

■花宴
・朧月夜登場。弘徽殿の女御の娘で東宮に入内予定。ばったり源氏と出会う。

■葵(源氏二十二〜二十三歳)
・一巻では、藤壺懐妊について悩みながら若紫をかっさらったが、ここでは、葵の上の喪も明けぬうちに若紫と結婚してしまったよ、まったく。乳母などは、こんなにきちんと結婚の儀をしてくれるとは思っていなかったからありがたい恐れ多いと思っているようだが、人目につかぬよう憚りながらの儀式なんてままごと同然では。そういう甲斐甲斐しさにだまされるな〜!しかも若紫に夢中で他の女のところに行かないのを喪中のせいにしてて、最低。

■賢木(源氏二十三〜二十五歳)
・六条御息所と源氏。会いたい、会いたくないの逡巡に逡巡を重ねた末、会って、泣きながら別れるも(野の宮の別れ)、すぐ十四歳の娘のこともいいなと思ってる。なお、六条御息所はおばさんおばさんと思っていたが三十歳。
・桐壺院崩御。今の帝は弘徽殿の女御の子で右大臣系なので、そっちの権勢の時代になっちゃうなあという政治的なそわそわ。藤壺中宮も里帰り。
・朧月夜は尚侍(ないしのかみ。女御や更衣のような、帝の寵愛を受けることも多い地位の役職。)だが密通を続けている。「心からかたがた袖を濡らすかなあくと教ふる声につけても」我(朧月夜)から求めた恋ゆえに〜と訳されている。
・とかなんとかしつつも中宮への執心も続いていて、なんとか忍び込んで逢っている。藤壺は頼りたい気持ちもあるががんばって冷たくあしらう、その心が辛すぎてついに女房が駆け寄るほど御病気になったがそのとき源氏の君は服脱いだまま呆然としているってどういう状況だ。塗籠からいつ出てくるか問題などややコミカルだがその後もまた惑乱、拒絶、諦めるなど。それで紫の上の前でメソメソするという。
・何も手につかないので雲林院に逗留して仏道の勉強などする。紫の上や、賀茂の斎院になった朝顔の姫君に手紙。源氏は朝顔の君へ、昔が懐かしいなどと手紙を送るも、昔に私たちの間に何があったというのと返される。手紙のやりとりはあまりすげなくもなさらずにしてくれる。
・紫の上が気にかかるので戻ってくる。そしてお土産の紅葉を藤壺の中宮にもっていく(おい)。帝にも挨拶。帝は源氏と朧月夜の関係をなんとなく認めているという大らかさで、源氏とは故院の思い出や色恋や学問の話で盛り上がる。
・藤壺、御落飾。左大臣も辞職。いよいよ右大臣系が強くなる。頭中将は右大臣の四の君の婿ではあるがいまいち。源氏とは相変わらず風流に遊んだりして過ごす。
・朧月夜との逢瀬。この姫君は積極的というか、源氏と示しあって合う算段をつけているところが他の女性たちとは違うところだ。右大臣パパに見つかった時の堂々たる源氏の姿の描写は見事。
「中には何とも言えず色っぽい様子で、臆面もなく横になっている男がいます。今になって、男はそっと顔をおし隠して、何とか身をかくそうととりつくろっています。」

■花散里(源氏二十五歳)
・花散里さんは、麗景殿の女御のおん妹君の三の君、という人物らしい。久々に思い出して訪ねる途中で通りかかった家が、さらに別の昔の女の家だったと思い出して歌を送るがもう別の男がいるっぽいので断念。去り際に、そういえば筑紫のなんとかいうあの人も素敵だったなと思い出すなど。花散里とは再会してまたゆるやかに関係が続いていく模様。源氏の付き合い方に合う人合わない人点描といった章。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ざっくり古典
感想投稿日 : 2023年12月19日
読了日 : 2023年12月19日
本棚登録日 : 2023年10月6日

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コメント 4件

たださんのコメント
2023/12/19

akikobbさん、こんばんは。

巻二は、結構、読み所満載な印象でしたが、こうして改めて振り返ると、若い頃の源氏って、本当にアホだなあと、言葉悪くて、すみません、思ってしまいました(^_^;
まあ、次から次へと飽きもせずって感じで。

akikobbさんのコメント
2023/12/19

たださん、こんばんは。コメントありがとうございます。

いやほんと、ひとりの女性の話をするごとにぽろぽろぽろぽろ色んな女性の話が出てくるのでもう追いつかない。語り手女房のツッコミが入ると安心します。(たださんもレビューで引用されていた、「どんな女に対してもお心の休まる暇がなくて御苦労なことです。」には笑いました。)
物語的には重要な出来事もりだくさんで、読み応えありました。
「若い頃の源氏ってアホやなあ」→若くなくなっていく源氏を楽しみに、読み進めていきます♪

たださんのコメント
2023/12/20

akikobbさん

そうですよね。もしツッコミが無かったら、案外笑えない話になっていたのかもしれないな、なんて思いますが、源氏については、後々の彼を見て、akikobbさんがどう感じるのか、気になるところです。

それから、本書ほど、他の方のレビューを読んで、新鮮な気持ちにさせられるのもないのではと思うくらい、読んでいて楽しいです(^∇^)
ありがとうございます♪

巻三も色々あって、ある意味、面白いですよ(^^)

akikobbさんのコメント
2023/12/20

たださん、こんばんは。

漫画『あさきゆめみし』にはなかった(と思う)のがまさにこの「ツッコミ」精神で、ちゃんとそういう視点もあったのか!というところが、今回現代語訳を読んでみての一大発見です。

「本書ほど他の方のレビューが新鮮なものはない」→わかる気がします!私も自分で読んでから他の方の感想を覗いてみると、この人はここが気になったのか、そういう捉え方もあるのか、と新鮮に感じることがありました。色んな読み方ができる…というのはどの本にも言えることですが、特に多様な気がしますよね。豊かな作品なのだなあと思います。
自分自身も、時間をおいて読んだら感想が変わるかもしれません。

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