ジャニーズと日本 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社 (2016年12月14日発売)
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「手の届かないスター」ではなくて「身近で等身大のアイドル 」。さらには平成不況時代に、一緒に"がんばりましょう"と語りかけてくれる「国民的アイドル」。時代の変遷に伴って人々がテレビに求めるものも変わってきて、そうした中で色々苦労したり試行錯誤したりしながら、オンリーワンな地位を築いてきた存在。

SMAPについてそういった見方をしている点は、同じ時期に出版された他のSMAP本に同じですが、ジャニーズ全体を語る対象としている点と、その際に「日系アメリカ人であるジャニー喜多川という人が目指しているもの」を捉えようとしている視点、そして音楽好きである著者の矢野さんならではの楽曲に対する考察、このへんが特徴的。

◼️SMAPの「身近さ」については、「自由でカジュアルなクラブカルチャー」「飾らないリアルな自我」といったキーワードで説明している。
どちらも、ジャニーズらしくないともいえばらしくない。というのもジャニー喜多川がそれまで志向し実現してきたのは、日常からかけ離れた恍惚とファンタジーの虚構の世界であり、自我の表現なんていらない(その意味ではアーティストである必要はない)、それを提供できるエンターテイナーであれ、という方向性だったからだ。
でも、じゃあSMAPは異端で、ジャニーズの本流と対立関係にあるとか、そんな単純な話でもない。昨今のメディア報道では強権的な印象もあるジャニーズ事務所だが、この本によれば少年たちの育成面においては、何が下手でも、美男子じゃなくても、ピュアでさえあればいい、誰しも磨けば光る個性がある、とかジャニーさんもいいこと言っている。
こういう姿勢も含めて、ジャニーズとは、ジャニー喜多川という人は、戦後の日本にアメリカのショービズのみならず自由と平等と個性の尊重、つまり民主主義を教えにきた、そういう存在なのだ。と矢野さんは言っている。

◼️また、「がんばりましょう」「オリジナルスマイル」などの楽曲が、発表時の意図やら作詞・作曲者の思いやらとは関係なく、震災などのきっかけで応援歌として蘇り、再び歌われる様子などをとりあげ、これこそポピュラー音楽の醍醐味だよね~と言っているところも面白い。「世界にひとつだけの花」や「Triangle」なんかは、もちろん良い曲だけど、正直仰々しくて戸惑うわ、と言っているところも共感した。

◼️他にも、ジャニーズ事務所の歴史を音楽面から解説している点は、あまり類似の本がなく貴重なのでは(確認したわけではないけど、そういう評判だ)。取り上げられる楽曲を知らなかったり、使われる音楽用語を聞いてもピンと来なかったりするので、じゅうぶん理解できたとは言えないが、「機会があればそういう耳で聴いてみよう」と思えたという意味では楽しめた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: なるほど系
感想投稿日 : 2017年5月5日
読了日 : 2017年1月23日
本棚登録日 : 2017年1月14日

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