「二人暮らし」アンソロジー。テーマもユニークだが、各章の舞台となる各部屋の物件情報付きというところも面白い。そして読んでみると、内容もバラエティ豊か!個人的には、名前は知っているけど読んだことのなかった今どきの作家さんの作品に触れられて良かった。(読むきっかけを下さった、なおなおさん〈と図書館司書さん〉に感謝です!)
以下、備忘メモ。
■朝井リョウ『それでは二人組を作ってください』
こういう言葉がタイトルである時点でもうどんなタイプの主人公かだいたいわかるし苦味もわかるという巧みさ。心もお腹もつらかった。
■飛鳥井千砂『隣の空も青い』
好きだった。海外出張先のホテルで、先輩と男同士ダブルベッドの部屋で生活することに…。これ全員性別逆だったらどうなんだろう、とちらっと思う。ドラマとして成立するとは思うが、ちょっと味わいが違ってまた面白いかも。
■越谷オサム『ジャンピングニー』
困った彼氏である。
■坂木司『女子的生活』
冒頭、なんだこの女、この話はハズレか…と思ってしまったが、見事作者の術中にハマっていた私だった。
■徳永圭『鳥かごの中身』
これも好きだった。アパートの隣室の子どもを訳あって一時的に保護するという、そのシチュエーション自体昨今の都会ではフィクションだからこそ成立することかもしれないが、そんな当たり前の優しさを持つ登場人物同士の交流に心が。
■似鳥鶏『十八階のよく飛ぶ神様』
打って変わってファンタジーアクションのノリに。やはり素行の悪さはそれ自体シンプルに悪である。
■三上延『月の沙漠を』
またまた打って変わって、しっとりした大正もの。これぞアンソロジーの醍醐味、とこのあたりで思う。
■吉川トリコ『冷やし中華にマヨネーズ』
どうしようもない十三年の同棲生活の終焉を描く。これも、読み終わってみると、けっこう好きだったなあと思う。全然きれいじゃないんだけど、これが人生かあ、みたいな。この作品が最後という点も含めて、良いアンソロジーだったなあと思った。
- 感想投稿日 : 2023年5月3日
- 読了日 : 2023年5月3日
- 本棚登録日 : 2023年5月2日
みんなの感想をみる