窪さん二冊目。「アカガミ」なんて不穏なタイトルなんだ、と発売当初から思っていたけど、読み始めて、この近未来、それもとても近い近未来の味気のなさ、ザリザリした空気の感触になんだか気持ちが灰色に満たされていくような気持ちになった。
主人公のミツキには父の不倫で心が壊れた母親と二人暮らし。若者は減る一方だけど、介護を必要とする老人は増える一方の都心。そこで介護の仕事をしているミツキは自殺をしようととあるバーでお酒と薬を飲む。しかし彼女は助かってしまう。店に居合わせたログという女は彼女に自殺をするなら人の迷惑のかからないところでするように言い渡される。そんな出会いから交流を持つようになったミツキとログ。ある日ログからミツキは国が秘密裏に行っている「アカガミ」というプログラムに参加しないかと持ち掛ける。
他人への興味も性欲も希薄な世代のミツキ。彼女たちの世代は四十台で死んでしまうと言われていた。そのためか自殺者も多い。そんな若者たちに相手をマッチングし、つがいになる場所を提供し、そこでつがいになった二人は子供を授かると、また場所をうつし、子育てに最適な環境を提供される。このプログラムに参加していれば、住む場所、食事、家族の生活を保障される。
ミツキはつがいに選ばれたサツキは家族を食べさせるためにこの制度に参加した。
二人はいつしか惹かれ合い、そしてまぐあう。そして子供を授かる。大きくなっていくお腹。手厚すぎる保護を受けて、二人の生活は進んでいくが、互いに胸の内側で言い表す言葉が浮かばないような不穏を感じていた。
そして出産のとき。
二人には思わぬ悲劇?ーーが。
窪さんの文章ってこんなんだったっけ、と最初は戸惑った。かなりぶっきら棒。無反応、無感動な主人公を描くのにはこれくらい色のない文章の方が自然なんだろうけれど。この無色無味の世界が、サツキとの出会いで色のあるものになっていく過程、緊張が解けていくみたいでいい。
最後、彼はこれでよかったと心から思ってくれてよかった。ハルノさんはどうなっていくんだろう。適合だった子供はどうなっていくのか、そしてその親は?そこがかなり気になる。ログという人には罰則とかあるんだろうか。
- 感想投稿日 : 2019年1月1日
- 読了日 : 2019年1月1日
- 本棚登録日 : 2019年1月1日
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