なぜ、わが子を棄てるのか―「赤ちゃんポスト」10年の真実 (NHK出版新書 551)

著者 :
  • NHK出版 (2018年5月8日発売)
4.07
  • (8)
  • (13)
  • (6)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 124
感想 : 13

熊本市の慈恵病院が始めた「赤ちゃんポスト」のその後の10年を追ったルポ。預けられた子供は130人に上るという。合法的に?赤ちゃんを捨てられる、というのは衝撃的で、当時あちこちで取り上げられたことを覚えている。

政府関係者が「子供を育てるのは親の責任」「親が赤ちゃんを置き去りにするのは許されることではない」と利いた風なことをいうのがむかっとした。そんなことは当たり前。でも能書きで子殺しや虐待は減らない。もし赤ちゃんポストがなかったら、預けられた130人の子供のうち何人かは、生きていくことすらできなかったのではないのか? ドイツがそうであるように、これは一病院の役割ではなく、本来は社会の仕事、政府の仕事なんじゃないのか? 
慈恵病院の蓮田理事長の言うように、最後の手段、必要悪ではあるのと思うので、気軽に使えるようになるのは違うと思うが、政府が積極的に関与しない、法制度の壁で広がらない、というのはげっそりした気分になる。

赤ちゃんポストが批判される理由の一つに、匿名のため、預けられた子供の親がわからなくなってしまうことが挙げられているらしい。個人的にはこれはちょっと不思議な話で、慈しんでくれた「育ての親」がいるのに、「生みの親」ってそんなに気になるものなんだろうか? 事情はともあれ自分を捨てた親って、忘れていいんじゃないの? 大人になってから生みの親を探して、そいつが屑だったらそっちのほうが傷つかないかな。まあ、ぼくだったら、と思うだけで、人それぞれだなんだろうな。

妙にウェットな書き口がちょっと気になったけれど、よい取材だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史・ドキュメンタリー
感想投稿日 : 2018年12月1日
読了日 : 2018年11月27日
本棚登録日 : 2018年11月27日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする