いい仕事してますね、と言いたくなる良書。誰も書こうとしないナチスのアナザー・サイド。タバコの発がん性を指摘し、アスベストの、合成着色料の危険性を警告し、自然食を推奨し、肉食を避け、動物の生体実験を禁じたのもナチスだった、という本書の主題はもちろん興味深い。
だが、それ以上に考えさせられたのが著者が再三繰り返す「多面性」。動物を大切にする一方で人間を粗末にしたナチス。動機はともあれ、国民を健康にすることに情熱を燃やした一方で、健康でない(と決めた)人々を抹殺したナチス。現在の視点からみれば絶対悪にしか見えないけれど、あの時代のドイツでは圧倒的な支持を受けたナチス。たぶん、本物の悪党は、わかりやすい凶悪な人相はしていない。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
歴史・ドキュメンタリー
- 感想投稿日 : 2012年12月26日
- 読了日 : 2012年12月15日
- 本棚登録日 : 2012年12月15日
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