監督、脚本 園子温
「時計じかけのオレンジ」を見た時以来の衝撃だった。愛に飢えた男女が、それぞれの形で愛憎をむきだしにしていく。そのむきだし方が、人間の本来持っている生の感情が何のベールやモザイクもなくさらけ出されている感じで、まさにキューブリックの世界観に共通するものを感じた。
満島ひかりの演技がとにかく素晴らしいの一言に尽きる。特に浜辺でコリント書の第13章をユウに対して訴えかけるシーンは鳥肌がたった。
他の二人の女性が、汚い役柄であることも、彼女の美しさを際立たせている。
西島隆弘の存在感も強烈だった。父親に罪を求め始められたあたりから、彼の精神状態はかなり蝕まれていたのだろう。同じ笑顔を見せているのに、徐々にそこに狂気の香りを匂わせていく。
ベートーベンの使い方も最高である。強烈なシーンに響く第7も、オレンジを彷彿とさせる。上述の浜辺のシーン然りである。
ラストの病室のシーンは、あまりに切ないデジャブ感に涙が止まらなかった。
人を愛すること、人に愛を求めることは、どこまでも深くなりうる。しかし、美しい愛と狂気の愛は紙一重である。だからこそ、愛によって人は幸せになり、人を憎み、抱擁したり、殺したりするのだろう。結局、愛の呪縛から人は逃れられないのだ。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
映画
- 感想投稿日 : 2016年2月18日
- 読了日 : 2016年2月17日
- 本棚登録日 : 2016年2月18日
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