報道が教えてくれないアメリカ弱者革命 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2010年10月27日発売)
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自由と民主主義の国といえば・・まず米国の名前が浮かぶ。しかし、その自由とやらが、弱者の犠牲の上に成り立つているものだとしたら。
本書は、そうした貧困にあえぐ米国人の若者が、詐欺のようなリクルート活動で戦場に送られている事実を明らかにしています。息子ブッシュ時代に成立した法案「落ちこぼれゼロ法」とは、学校に行きたくても行けない貧しい家庭の子をターゲットに、後方支援の仕事がメインだとか学費や医療保険、最低賃金や除隊後の就職先のあっせんなどの甘言で軍隊の下部組織が、直接学生をリクルートしていく。しかし、実際は真っ先に前線に送られ、大学の奨学金をもらうために払えそうもない前金が必要だったり、除隊後はPTSDで仕事どころではない精神状態で帰還という有様。リクルーターは、もちろん現実を知っているが、リクルート数のノルマがあるため自分が失職しないように平気でうそを言う、そして学校はこの法案に反対すれば助成金がカットされるというそれぞれの弱みに米政府はつけこむ。さらに、9.11後に成立した「愛国者法」は、戦争反対者をテロ容疑の名目で逮捕できるようになった・・
著者はこうした現実を丹念にインタビューで拾っていく。
結局弱者は、「生活が苦しくて入隊しても、社会の底辺から軍というシステムの底辺にスライドするだけ」の捨て駒でしかない、という諦念から逃れられない。
そうした閉塞感から、戦場で息子を亡くした母親たちがついに立ち上がった・・
さらに、電子投票に反対するハンスト活動家ジョン・ケニーの話も必読です。

作品紹介・あらすじ:
豊かなはずの超大国アメリカに、貧困生活を送る人、医療費が払えず破産する数多の人がいる。貧しさゆえに戦場に送られ、心身に深い傷を負う若者がいる。そんな現状を打破すべく立ち上がった「弱者」たちがいた-。電子投票に抗議する活動家。軍事訓練に反対する高校生。反戦運動を展開する母親たち。進み続ける彼らに寄り添い、希望の灯を探す若きジャーナリストの心の旅路。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年10月11日
読了日 : 2021年10月10日
本棚登録日 : 2021年10月10日

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