日本では唯一の「森林ジャーナリスト」を名乗る田中淳夫の著作で森林に関する世の常識、我々の思い込み、認識の違いを改めて学び直そうという試み。
自然を大事にしよう、海を守れ、川を守れと来れば当然のことながら森林も守れとついつい云いたくなるのだが何のために守るのか、そしてどうすれば守れるのかとなると、言われるほど一筋縄ではいかないようだ。
例えば外国資本が森林で安値で買い叩いているが、乱開発されると将来的には水源涵養機能を損われる恐れがあるので反対とか良く言われているが、実際には森林に水源涵養機能が殆ど無いのが真実だという。水源涵養機能は基本的には土壌(深層岩盤)の問題で森林があることの利点は土壌流出の防止と河川の流量振幅の抑制効果なのだ。
原生林が自然の代表という誤解があるが原生林は植生が固定化され衰退する一方なので間伐を含め手を入れなければ守れない。里山・雑木林にしても人手を掛けなくてはならないのは一緒だし、竹林の侵食が目だつ。竹の繁殖率・生命力は異常に強いので森林を駆逐するので根こそぎ伐採しなければ里山を守れない。
林業に関しても第一次産業の典型で小規模経営と高齢化が問題で、木材品質を守るための間伐作業はおざなりになり輸入品と比べると競争力の低下は著しいことから価格は低迷し悪循環に陥っている。
小学校で日本の面積の70%は森林だ、と習った記憶があるが今や荒廃するに任せていると其れほど遠くない将来は禿山ばかりになるのであろうか?何から手をつけて良いのか判らないが、農業・漁業に比べると林業は格段に足の長い仕事であり日銭を稼ぐのも困難な産業であることからも再生への道筋は遠いと思われる
- 感想投稿日 : 2011年11月28日
- 読了日 : 2011年11月28日
- 本棚登録日 : 2011年11月21日
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