能登半島の実験所に滞在することになった守田くんは、恋文代筆業でもはじめようと、恋文の技術を磨くため友達や先輩、家庭教師のときの教え子に片っ端から手紙を書きまくるんだけど、もう阿呆なやりとりしかしない。恋文どこいった?って思いながら笑ってしまう。
でも実はその裏で守田くんはこっそり自分の思い人への恋文を書き続けていたことがわかる。いや、お前が恋文書くための修行だったんかい。恋文代筆業とか言ってたくせに!とつっこんでしまう。
その恋文も失敗だらけで、読みにくかったり気持ち悪かったりする。大丈夫かな、もう恋文は諦めたほうがいいんじゃ…と心配するが、最後の守田くんが書いた恋文と、恋文の技術についての守田くんの結論は思いがけず素敵だった。
森見作品の好きなところは、阿呆さで笑わせにかかってきても、途中でうっとりするような情景が浮かんでくるところだ。この作品で言うと、赤い風船が飛んでいる様子を車窓から見つめている情景にうっとりする。そのギャップが、登場人物を愛すべき人物にして、物語を少しファンタジックに仕上げているのだと思う。
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- 感想投稿日 : 2019年1月25日
- 読了日 : 2019年1月25日
- 本棚登録日 : 2019年1月25日
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