北海タイムス物語

著者 :
  • 新潮社 (2017年4月21日発売)
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本棚登録 : 241
感想 : 38
4

まさにブラック企業丸出しの小説です。
1990年というとおおよそ30年前。24時間戦えますかなんて言葉が生きている時代の事です。北海道に実在した弱小名門新聞社を舞台にした熱血仕事小説です。
まさに猛烈に働いて働いて働き倒すという趣きの、ふた昔前の野球漫画のような世界観ですが、なんとなくその名残の残る頃から働き始めた世代なので妙に胸に来るものが有りました。
出てくる登場人物も非常に前時代的で、「一度しか言わないからよく聞いとけ」というような、非効率的な言葉もバンバン出てきます。しかもこの主人公の巡洋君は結構なへたれで、希望の部署に行けなかったからといってずっと腐って仕事に向き合わず、救いようねえなこいつ。という目線で見てしまうので中盤までイライラします。
しかししかし、周りが素晴らしい先輩ばかりで、次第に彼の心に芽生えてくるものがあるわけですよ。これが非常に胸を打ちます。
繰り返し言いますがまさにブラック企業です。完全にやりがい搾取、労働力搾取状態です。給料のあまりの安さに絶句すること間違いなしです。架空の会社ではなくて実在した会社をモデルにしていますから、ある程度ドキュメンタリーな部分もあると思います。
それでも同じ境遇でやりがいがある仕事だと、燃えてしまうのなんだか分かるんですよ。自分も一度有名企業で死ぬほど働いていた時、仲間意識でお互いに励まし合って兄弟のような連帯感になってくるんです。まさに北海タイムスのように。
企業がそんな社員の懸命さに甘えちゃいけなんだぜって思いながら読みました。
ちなみに感動して涙出ました。まさに男の涙。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年6月28日
読了日 : 2019年6月28日
本棚登録日 : 2019年6月28日

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