チャーチル―イギリス現代史を転換させた一人の政治家 増補版  (中公新書)

著者 :
  • 中央公論新社 (1998年1月25日発売)
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感想 : 16
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チャーチルの「第二次世界大戦」て読んでみたい本の一つではあったけど、
これ読んでもういいかな、という気分に。

ドイツの空爆に耐えてイギリス国民を鼓舞、戦後はすぐ選挙に負けて失脚。
くらいしか知らなかったイギリスの政治家。
確かに第二次大戦の首相在任時が見せどころではあったけど、その60年近い政治家人生は波瀾万丈。

25歳で初当選してから保守党→自由党→保守党と行き来。
若いうちから閣僚を務め失業、健康保険という社会制度の創設にもかかわるけど、基本的には保守的。
あとがきの「左翼や進歩的な人々、理想主義的な若者の目から見れば、彼は昔ながらの帝国主義を忘れられない1人の老政治家でしかなかった」
ということに濃縮されるかと。
少なくとも著者はチャールズの政治家としての手腕や判断力をそれほど評価していない。
でもイギリスという世界の大帝国の支配階級としての誇りを端々に感じる。

あとイギリスは議会政治の国だけあって「まじめか」って突っ込みたくなるくらいやたら選挙が多い。
チャーチル自身、何度も敗れたくらい。
だから政治はどうしても議会や選挙を意識したものになるから、
歴史の流れを知っている側から見るといちいち決定が遅いように感じてしまう。
特にドイツへの譲歩を重ねるあたりのやりとりはやきもきさせる。
戦争中も議会や国民を意識し、ちょっと戦局が悪化すると責任を問うたり不信任決議が出るあたり、すぐ大政翼賛になって軍に引っ張られた日本と対照的。
ボールドウィンの「民主主義は常に独裁者よりも2年遅れるものである」という言葉がしっくりくる。

メモ
「帝国主義の経済的利益よりも、むしろ他国を支配することが支配者と支配民族の責任感を高め、彼らを高貴にし、被支配者に対する慈愛と理解を生むと信じていたから」
「つまりイギリスは戦後の世界において大国としての地位を維持できるかどうかという問題が浮かびあがってきた」
「私はイギリスと連邦が今やおとなしい小さな役割に追放されたという見解を拒否する」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2013年5月11日
読了日 : 2013年5月11日
本棚登録日 : 2013年5月11日

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