国家の自縛 (扶桑社文庫) (扶桑社文庫 さ 18-1)

著者 :
  • 扶桑社 (2010年3月31日発売)
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感想 : 12
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国策捜査、対露外交、陸軍中野学校、キリスト教、同志社学生時代、国体論、神皇正統記、大川周明…。こういう話が好きな人はいいんですが分からない人にはまったく興味のない筆者のインタビュー集です。でも面白い。

この本を最近久しぶりに読み返していました。それと同時に、某動画サイトで佐藤優さんの動画を片っ端から見聞きして、改めて彼の優秀さと、そういう人材を使いこなせなかった「組織」と言うものについて考え込む日が続きました。 ここに記されているのは、彼のインタビュー、そして文庫化にあたり「文庫版あとがき」として160枚の新規書き下ろしを加え、“戦友”斎藤勉による「佐藤優の自白調書」を収録したものになっています。

国策捜査、対露外交、陸軍中野学校、キリスト教、同志社学生時代、国体論、神皇正統記、大川周明…。語られているテーマの一つ一つがすごく読み応えがあって、僕は大好きなんですけれど、興味のない人には
「だから、なに?」
と言いたくなる話が多いんですけれど、これが後に論壇で『知の怪物』と言わしめる片鱗がそこにはありました。

僕が特に面白いと感じたところは筆者が現役の外交官としてインテリジェンスの専門チームを率いていた小泉純一郎政権のころに彼らが経済的な転換を図った、と言うところでした。具体的に言うと、
「ケインズ型の平等な再分配をやめてハイエク型の傾斜分配式に変えた」
と言う記述でした。特に
「地方を大切にすると経済が弱体化する」
「公平配分をやめて金持ちを優遇する傾斜配分に転換することが国益だ」
露骨には言えないけれど、こういう風に方針を転換した、と言う筆者の主張に東京にいたときの『ミニバブル』の恩恵に少しあずかり、現在は衰退する地方の現実をイヤというほど見ている身として、ものすごく納得がいくものだと思いました。

ほかにも、後の彼の執筆活動につながるものがいくつも散見できますので、彼の主張に耳を傾けたいときにはぜひとも抑えておきたい文献だと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2011年12月26日
読了日 : 2011年12月26日
本棚登録日 : 2010年11月6日

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