反貧困の学校2

  • 明石書店 (2009年7月31日発売)
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感想 : 6
5

 いま、雇用や仕事そのものがどんどん海外、特にアジアに進出していく傾向にあるなかで今後どうすればいいのかを考えさせられる本でした。

 この本に描かれている舞台の2009年の段階では、前年度の2008年末に「年越派遣村」が結成され、「貧困が可視化」された1年でした。僕がなぜ、今年の最後の最後にこういう話題を書いている理由はたったひとつ。ひとつボタンを掛け違えていれば、僕自身もあの中の一人だっただろうからに他ならないからです。あまりそのときのことは詳しくは書けませんが、まったく彼らのことを「他人事」とは思えませんでした。

 「板子一枚下は地獄」僕が育った地元の街は漁師町だったのでだれかれともなくそういうことが言われていたのですが、いまの時代は一度失職をしてしまうと即住居も失うハメになり、再就職をするときにも住所があるのとないのでは雲泥の差がありますから、そこで彼らのいう「貧困スパイラル」に簡単に陥ってしまう現状があります。

 ここでは障害者雇用の問題や、ハローワークの職員などに代表されるような公務非正規労働者のの問題。たとえ大企業の正規雇用者であっても別室に呼び出され、ありとあらゆる手段を持って「自己都合」退職に持っていくように、「退職推奨」が行われていることをIBMの例を取り上げて説明されていました。こういった状況をある外国人は
「いまの日本では凍死、餓死を容認している」
と言っていたのがまさしくそのとおりだと思わずにはいられませんでした。そして、この本で多くのページを割いているのが女性の労働と貧困に関する箇所でした。突然の雇い止めや派遣社員はほぼ確実に正社員に雇用されることができないと言う現実。過剰な労働でも我慢して働き、体を壊して何の保証もないまま放り出される女性たちの様子が赤裸々に証言されていて、胸が詰まる重いでした。
「政府の職業訓練とか、自立支援とか、もう本当にくだらないと思います」
と言う言葉が頭を離れません。
 
 そして最後に、高校生の労働問題に対する内容でした。僕は色々あったので労働三法を自分で勉強したのですが、高校を卒業して社会で働く人のほうが絶対数は多い以上、授業として、「働き方」や労働法をもっと教えるべきではないかと思っていたのですが、「知る」と言うことが「得」なんだということが分かればこれからの労働市場も変わっていくのですけどね。そんなことを考えさせられた一冊でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2011年6月20日
読了日 : 2011年6月20日
本棚登録日 : 2011年6月20日

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