“とり残された”高校一年生の男女ふたりを中心としたお話。主人公・陸上部所属の長谷川初実(ハツ)は、理科の授業で向かいの席だった蜷川(にな川)智が女性向けファッション誌を読んでいる姿をみて、にな川に対し、雑誌に掲載されているモデルを見たことがある、と言う。にな川は、以前ハツが無印良品のカフェで見かけた モデル「オリチャン」の熱狂的なファンだったのだ。
ハツに当時のオリチャンの印象について聞きたいとにな川は自身の部屋にハツを招き入れる。そんな絶妙な距離感のまま、にな川の部屋にあるオリチャン関連グッズが収納された箱の底に隠れていたアイコラを発見したハツは目の前にあったにな川(オリチャンのラジオに没入している)の背中を蹴る。
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比喩表現が上手すぎる。たまらん。
校内での新入生の肩身の狭さが
巧妙に表現されていて、
思わずあの思い出したくもない記憶が蘇った…
ハツは、にな川への嫌悪と愛情が絡み合った末
相手の背中を蹴るという行動に至り、
また、にな川が見世物になっていると一種の喜びを感じているようにも思える。
だが、上述のような行動を起こしたり、
にな川の唇を舐めたり、
にな川が一線を軽く越えてしまったとき、無意識的に哀しみが溢れてしまったり。
第三者の目線でないと気付けない「自らの本音」が私にはいくつあるだろう。
自分を最も理解していない存在は
自分自身なのかもしれないし、
それ以前に 真の自分 はとっくの昔に道端かどこかで落としてきたかもしれない。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説〈日本〉
- 感想投稿日 : 2021年3月6日
- 読了日 : 2021年3月5日
- 本棚登録日 : 2021年3月5日
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