今回は今まで同じ学年の5人がふうせんかずらという得体の知れない存在に
精神を嬲られると言うパターンでしたが、今回からは短編集からの新メンバーの千尋と紫乃が加わり、
ふうせんかずらは新しい2人を利用する手段を講じてきます。
得体の知れなさに怯え、距離をとった紫乃に対し、千尋はふうせんかずらの提案を受け入れ
それによって得た能力・・・相手の思う者になりすます事で5人の関係を崩しに掛かります。
体育祭が近づき、準備に追われる中で、
上級生5人の姿を眩しく感じる2人の下級生の心は羨望と諦めから踏み込めない紫乃と
苛立ちと逃避から5人を汚してしまいたいと歪に走る千尋との視点から進んでいきます。
彼らの目に映る上級生達は果たして気付かぬうちに始まっているふうせんかずらの脅威を
どう乗り越えていくのかが見物となっています。
とある場所のレビューを見ますと、中にはマンネリだと捉える感想もあるようですが、
展開は一緒でも、それを重ねる毎に太一、稲葉、永瀬、唯、青木ら5人が
変化を、成長し続けている事を汲み取らねばならない事に気付けないのか不思議でなりません。
ここに出てくる少年少女達はラノベには珍しく、実に一般的な若者でしか無く、
それが思いもよらぬ出来事に遭い、晒され続ける中での苦悩が実に丁寧に綴られている事を
察する事が出来ない様では話になりません。
表面的には強がってみても、内心は何時崩れても不思議はないぎりぎりの状況に立たされており
そこを5人の仲の良さで支え合いながら、しかし時には反撥もし、そしてそれを乗り越え
更に絆を深めて行く、実にテーマ性が強く、丁寧に作られた物語であると私は感じます。
臭さもあります。しかしそれもまた青春と笑ってしまえる所もまた一つの味でありますし、
羨ましさを覚えますね。今回の千尋の様にそれに反撥する気持ちと言うのもまた分かります。
そうしたあり得そうな心を描き、そして繋げてみせる物語。
既にタイトルに十分作者の思いが表れているのだと思います。
今時の作品によく見られる、感情の赴くままに行動し、自己完結する様な主人公ではなく、
相手の事を慮り、感情に流されそうになりながらも懸命に考え、心を通わせるのは
とても大切な事であると感じます。心とは感情のみではなく思考が伴ってこそ
おおきく育って行くのかも、大人にもとても考えさせられる温かな作品であると思います。
白身魚氏のイラストがまた作品にとても合っているのですよね(*^_^*)
- 感想投稿日 : 2012年3月18日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2012年3月18日
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