赤い指

著者 :
  • 講談社 (2006年7月25日発売)
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感想 : 796
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引きこもりの息子が少女を殺害。
息子をかばうため、死体遺棄にはじまり証拠隠滅作業。
そして、“認知症”の母親に濡れ衣を着せるという恐ろしい計画を実行しますが、実は、家に居場所が無いが為に“認知症のふり”をしていただけだったという衝撃の事実。
事件を犯した張本人である息子の横暴で反省の色が全く見えない態度に心底腹が立ちましたが、ふと思えば、現代の若者たちに増えつつある姿だと思いました。
自分を守ることで精一杯、誰かの人生を台無しにしてしまっていることにすら気づけない。
なによりも、婿夫婦の陰謀を知ったときの母親の気持ちを考えると胸が痛くなります。
“犯人探し”のミステリーではなく、消えてしまった家族の愛の行方を探し出す、悲劇が更に悲劇を生んだ、そんな悲しいミステリーでした。
全てが分かってしまった瞬間のラストは切なさで泣きそうになりました。
ベテラン刑事さんと入院中の父親との関係性も、最後にグッときました。
何か抱えている人ほど多くは語らない。
子どもとして、子どもを持った親として、なによりも人として、とても考えさせられる作品。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 和書
感想投稿日 : 2013年8月2日
読了日 : 2013年7月7日
本棚登録日 : 2013年7月7日

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