ご存知、ビジネス小説作家城山三郎氏による、渾身のノンフィクションである。城山氏自身が戦中海軍に所属していたようだが、若年だったため身分は訓練兵であり、出征は免れた。
著者の無念さが全編を通してにじみ出ている。著者自身の、特攻隊員たちへの最大限の弔いとして本書が書かれたに違いない。というのは、巻末の参考資料が何十冊というすごいリストなのである。何としてでも正確な記録を残そうという著者の執念というか、真摯さが感じられる。
表紙にある写真は、一人目と最後の特攻隊である。最初の関氏は、「僕ほどの技術を持ったパイロットに攻撃をさせずに特攻をさせるとは、バカげている」と言いながらも、命じられて散った。最後に特攻をした人は、何と終戦を知らず飛び込んだのであった。これら23歳の若者たちはともに家庭を持ったばかりで、何とも惜しい。また信じられないのが、戦後その母親たちが後ろ指をさされながら暮らさざるを得なかったということだ。特攻専用機の桜花や、人間魚雷の回天の記述には胸が痛んだ。
若者だった著者自身の回想も入っており、ちょっと読みにくい個所もあるが、極力分かりやすく書く努力が見受けられる。著者の使命感を感じさせる本である。
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- 感想投稿日 : 2019年9月9日
- 読了日 : 2019年9月9日
- 本棚登録日 : 2019年9月9日
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