令和元年のテロリズム

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  • 新潮社 (2021年3月26日発売)
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── 磯部 涼《令和元年のテロリズム 20210326 新潮社》
http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/B08XX7LF33
 
 青葉 真司
♀□□ □□ 
https://news.yahoo.co.jp/articles/df1eccaa0f164cc1f5b1820e478807abca0c864b
 
…… 「京アニ事件」から2年「呪われた」家系図 祖父、父、妹が揃
って自殺。自死していた青葉の祖父「令和元年のテロリズム」より
(撮影・山谷 佑介)
 
 令和元年7月18日に起きた京都アニメーション放火殺傷事件。犯人で
ある青葉真司の足跡を辿ると、祖父、父、そして妹が揃って自殺してい
たことが判明。「呪われた」としか言えない青葉家の歴史に迫る。令和
元年に起こった象徴的な事件を追うノンフィクション『令和元年のテロ
リズム』(新潮社)を刊行したライターの磯部涼氏によるルポ。連載第
8回。
 
【写真】青葉が最後に暮らしたアパート
 
 青葉真司が生まれてから京都に向かうまでの41年間の歩みを車で辿っ
ていると、とあるエリアをぐるぐると回ることになる。そして窓の外を
流れる広大な田畑と面白みのないロードサイド店舗を見続けることにな
る。青葉は埼玉県南東部から茨城県南西部にかけての各所を転々として
半生を過ごした。つまり彼は北関東(*8)ののっぺりとした風景に半ば
閉じ込められていたわけだが、そこを抜け出すための出口と定めたのが
〈京都アニメーション大賞〉で、しかし穴の向こうに見える世界は次第
に歪んでいった。前述の2地点の内、前者のさいたま市が青葉の生地、
後者の常総市は彼の両親の生地にあたる。ひとりの犯罪者について考え
るとき、生い立ちに意味を見出すことには慎重にならなければいけない。
それでも青葉を取材しているとその呪われた――という言葉さえ使いた
くなるような家族を巡る物語に、運命めいたものを感じずにはいられな
いことも確かだ。
 
 青葉 真司の父・正雄(仮名)は昭和8年、現在は常総市に属するS町
で生まれた。平屋だったという実家は既に取り壊されてアパートが建っ
ているが、その前に広がる田地の風景は当時とたいして変わらないだろ
う。ただし青葉家の所有していた土地は狭く、暮らしは厳しかったとい
う。(真司の祖父にあたる)正雄の父は家計を支えるために副業で、荷
馬車を使って遥々東京まで品物を運んでいく、今で言う運送屋をしてい
た。町の人々は彼を「働き者だった」と思い返す。「飼っていた馬が白
かったので、“白馬車”さんって呼ばれていました。馬が可哀そうだか
らって、自分がいくら疲れていても馬の背中には乗らない、気持ちの優
しいひとでしたね」。そんな“白馬車”さんの最期は自死だった。「癌
になって、病院に入るお金もないから苦しんで。首をくくってしまった
んです」。
 
*8 北関東の定義はさまざまだが、ここでは東京より北の埼玉県、茨城
県、群馬県、栃木県を指している。
 
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(20210717)
 

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感想投稿日 : 2021年7月17日
本棚登録日 : 2021年7月17日

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