閉鎖病棟 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1997年4月25日発売)
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感想 : 647
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最近特に、精神科に興味がある。精神科医の名越康文先生のyoutubeにハマったのが原因だと思う。

そんなこんなで手に取った閉鎖病棟。現役の精神科医である帚木蓬生さんが朴訥とした語り口で描く、精神科病棟の人々のおはなしである。

帚木蓬生という名前から、何故か瀬戸内寂聴さんみたいな人だと思いこんでた。精神科医と知ってびっくり。閉鎖病棟も説教くさい自己啓発本だと思って数年間読まずに放置してたのは秘密である。恥の多い人生を送ってきました。

読み始めていくと、はじめに地の文に対しての違和感を抱いた。群像劇だからなのかな。登場人物の個性が地の文に全然反映されない感じ、物凄く淡々としてる感じがした。でもそのうちストーリーが面白くなり過ぎて気にならなくなった。

読者にちょっと不親切な群像劇がとても好き。え!この名前…ってなって前のページに戻るの楽しい。ルンルン気分で中間部は読み進めていった。

精神科病棟に対して、漠然と怖くて汚い牢屋みたいなイメージを持っていたし、患者さんは自分にとって相容れない人達だと思っていた。この本を読んでいると、病棟にいる人たちだって、今まで生きてきた歴史があって、様々な感情を抱えて今を生きているんだよ。って優しく諭されてる気がした。


「病院に入れられたとたん、患者という別次元の人間になってしまう。そこではもう以前の職業も人柄も好みも、一切合切が問われない。骸骨と同じだ。

チュウさんは、自分たちが骸骨でないことをみんなに知ってもらいたかった。患者でありながら患者以外のものにもなれることを訴えたかった。」

胸を突かれた。医師である帚木さんは、どのような気持ちでこの言葉を紡いだのだろうと思った。

最後は本当に感動した。上手く言葉にできなくて小学生の感想みたいになってしまった。物語としても素晴らしく面白かった。

帚木さんはどの程度現実の精神科病棟に即して書いたのだろう。私は今、精神科病棟やそこにいる患者さんに対して素敵な偏見を抱いてしまった。実際を見た時、私はどのような気持ちになるのか、今はまだ想像できない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年10月17日
読了日 : 2020年10月17日
本棚登録日 : 2020年10月17日

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