残虐記

著者 :
  • 新潮社 (2004年2月27日発売)
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本棚登録 : 845
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 誘拐され、1年余りもの期間監禁されていた小学4年生の少女。犯人との奇怪な同居生活の末無事救出されるも、世界の変わりように不安を抱き、想像されることの屈辱に耐え切れず、次第にケンジ(犯人)との単純な生活に逃げ込みたいと思うようになる。しかし、誰にもその心を打ち明けられない。唯一彼女を救ったのは、「夜の夢」だった。
 夜の夢を見ることで、図らずも妄想力を鍛えた彼女は、20数年の時を経て小説家になっていた。本著は、裁判時にも一切証言をしなかった事件の真相を、被害者の立場から語った原稿である。加えて、事件に残された謎を妄想という名のスパイスを加えて補完しているため、真実は結局わからないまま、そして彼女が失踪した理由も明かされないまま、決して読後感は良くない。

 朝なんとなく点けたテレビからは、毎日のように悲惨な事件が報道されている。それに顔をしかめながらも、顔のない被害者を思いやっているふりをしながらも、私たちは想像している。そういう想像を欲する「残虐さ」から、「残虐記」なのかなぁと思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 現代文学
感想投稿日 : 2016年11月13日
読了日 : 2016年11月10日
本棚登録日 : 2016年11月10日

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