まほろ駅前番外地

著者 :
  • 文藝春秋 (2009年10月15日発売)
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 「まほろ」続編。やっと読めた。
 前作からだいぶ時間が空いてしまったけれど、曾根田のばあちゃんや岡夫婦や由良公の名前と前作のちょこっとしたエピソードを読んで、「ああー、そうだったそうだった。」とすぐに思い出せる。ルルたちも元気そうで良かった。


 岡夫人視点の話では、昔の多田があんなに暗かったのだと知ってびっくり。行天のほうは、前作にいろいろと含みがあったから、多田と暮らすようになって変わっていったんだなあって、実感していたんだけど、多田も行天と一緒にいることで変化していったのね。それはよかった。

 
 家族でも恋人でもなく、友人でもない多田と行天。細く薄い結びつき。
行き場もなく、一緒にいたい相手もなく、「行天でも、まあいないよりはまし」と考えて、行天と一緒にいる多田だけど、はてさて行天の方はどうなのか。


 チワワにケーキを食わせようとしたり、
便秘になると食欲が増したり、
いきなり多田の運転する軽トラから飛び降りて由良公を追いかけたり、
なぜかやたら歌がうまかったり、
ありえないくらいケンカが強かったり、
なぜかいきなり筋トレを始めたり、
正月にはやたら立派な門松を欲しがったり、
金剛力士像の吽形を目指すから、多田には阿形になれといったり、

はたから見ると、ハチャメチャな言動をとる行天。けれど、彼はいまだいえない傷と狂気を内に秘める存在。


 多田と行天には、これからも離れないでいて欲しいと願う。
 お互いを大事だと感じる気持ちがあれば、家族や恋人や友人といった言葉を越えて、そこにはとても低音だがしぶとく存在する「愛」が存在するのだと私は信じたいから。

と、いうわけで、続編期待します。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 三浦しをん
感想投稿日 : 2013年3月4日
読了日 : 2013年3月2日
本棚登録日 : 2013年3月4日

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