何度も読んで、毎回最後まで見きれず挫折していた「坊ちゃん」。
どうしても坊ちゃんのイライラについていけず…。
田舎をバカにする態度も、いろんな人に対する
傲慢な態度にも辟易してしまって、どうしても最後まで
読み切ることができなく、パタリと本を閉じる…。
その繰り返しだったけど、今度こそ!
と絶対に読むと決めて挑んだ何度目かの坊ちゃん。
やっと最後まで読むことができた。
やっぱり今回も何度も閉じたくなりつつ[´ー`;]
でもでも最後まで読んでほんとによかった。
私にとっては、よく「坊ちゃん」について聞く批評とは
感じることがまるで違うというか、勧善懲悪でも
胸のすく話でもなく、不条理で憤懣やるかたない
切ない話という全体の印象だった。
山嵐とうらなりさん以外はいい人に感じられない。
清は現実度外視で坊ちゃんだけを溺愛し、
坊ちゃんと同じく「田舎の人」への偏見にも
満ちていたりもするので、褒められた人とは感じないけど
その愛情は揺らぐことなくあたたかく愛おしい。
坊ちゃんは気性は真っ直ぐだけど、とにかく怒りっぽく
1つの角度でしか物事を考えたり捉えたりすることしかできない
欠点はあるけど、間違ったことにはちゃんとすぐ詫びることもできる
ただ頑固な人ではなく、まだ日本が今の日本とはまったく別の国
とも言えるほどの倫理観だったので、いろいろな道理の祖語は
仕方ないこともあるんだと思うので、最後まで読み通すと
坊ちゃんの勝手さに振り回されることだけでなく
とても魅力的な小説であることに気づくことができた。
明治39年に書かれた作品なので、その当時の日本の背景や
暮らしぶりもとても興味深く、なによりいい人は少ないけど[笑]
1人1人の人物が生きた人として心にくっきりと残る。
道後温泉や坊ちゃんの愛した団子、天麩羅蕎麦。
今度旅行する時はゆっくりと坊ちゃんの足跡も感じながら
楽しい文学散歩ができるかなぁと思うとわくわくした。
中盤からは特に一気に物語を読ませる熱量を感じて
村上春樹さんを読んだ時と同じく、これが天才なのか…と
難しいことや仔細について考えていくまでもなく
いかに魅力的な文筆家であるかを感じて感動した。
他の作品はもちろん、夏目漱石という人にとても魅力を感じて
いろんな資料を読みたいなと思った。
あたたかい古き日本を愛し、近代に絶望を見た夏目漱石の
人となりを知りたいと思えた素晴らしい作品でした。
- 感想投稿日 : 2013年3月9日
- 読了日 : 2013年3月9日
- 本棚登録日 : 2013年3月9日
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