坊っちゃん (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 11495
感想 : 1042
4

何度も読んで、毎回最後まで見きれず挫折していた「坊ちゃん」。

どうしても坊ちゃんのイライラについていけず…。
田舎をバカにする態度も、いろんな人に対する
傲慢な態度にも辟易してしまって、どうしても最後まで
読み切ることができなく、パタリと本を閉じる…。

その繰り返しだったけど、今度こそ!
と絶対に読むと決めて挑んだ何度目かの坊ちゃん。
やっと最後まで読むことができた。

やっぱり今回も何度も閉じたくなりつつ[´ー`;]
でもでも最後まで読んでほんとによかった。
私にとっては、よく「坊ちゃん」について聞く批評とは
感じることがまるで違うというか、勧善懲悪でも
胸のすく話でもなく、不条理で憤懣やるかたない
切ない話という全体の印象だった。

山嵐とうらなりさん以外はいい人に感じられない。
清は現実度外視で坊ちゃんだけを溺愛し、
坊ちゃんと同じく「田舎の人」への偏見にも
満ちていたりもするので、褒められた人とは感じないけど
その愛情は揺らぐことなくあたたかく愛おしい。

坊ちゃんは気性は真っ直ぐだけど、とにかく怒りっぽく
1つの角度でしか物事を考えたり捉えたりすることしかできない
欠点はあるけど、間違ったことにはちゃんとすぐ詫びることもできる
ただ頑固な人ではなく、まだ日本が今の日本とはまったく別の国
とも言えるほどの倫理観だったので、いろいろな道理の祖語は
仕方ないこともあるんだと思うので、最後まで読み通すと
坊ちゃんの勝手さに振り回されることだけでなく
とても魅力的な小説であることに気づくことができた。

明治39年に書かれた作品なので、その当時の日本の背景や
暮らしぶりもとても興味深く、なによりいい人は少ないけど[笑]
1人1人の人物が生きた人として心にくっきりと残る。
道後温泉や坊ちゃんの愛した団子、天麩羅蕎麦。
今度旅行する時はゆっくりと坊ちゃんの足跡も感じながら
楽しい文学散歩ができるかなぁと思うとわくわくした。

中盤からは特に一気に物語を読ませる熱量を感じて
村上春樹さんを読んだ時と同じく、これが天才なのか…と
難しいことや仔細について考えていくまでもなく
いかに魅力的な文筆家であるかを感じて感動した。
他の作品はもちろん、夏目漱石という人にとても魅力を感じて
いろんな資料を読みたいなと思った。

あたたかい古き日本を愛し、近代に絶望を見た夏目漱石の
人となりを知りたいと思えた素晴らしい作品でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ■ 夏目漱石
感想投稿日 : 2013年3月9日
読了日 : 2013年3月9日
本棚登録日 : 2013年3月9日

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コメント 2件

kuroayameさんのコメント
2013/03/10

松山にいとこがいるので、北海道に住んでいた頃から何度か訪ねているのですが、坊ちゃんはこれまで二度ほど読んだ本で、道後温泉、松山城などに足を運ぶたびに坊ちゃんの光景と重ねることができ、わくわくしちゃいます(^з^)-☆。
坊ちゃん団子を初めて食べた時には嬉しくてたまりませんでした( ´ ▽ ` )ノ。

山本 あやさんのコメント
2013/03/13

[♥óܫò]∠♡えぬちゃん

本の中の景色を知ってたりすると
ますますうれしくて愛着がわくよねー[*Ü*]
本で読んだ場所に後から行くのもすごい楽しいし
いろんな楽しみを本って増やしてくれるよねー♡

私も早く道後温泉を見に行きたいなぁ~☆
何日も滞在できるんだったら、現地で
その空気と景色を前に坊ちゃんを読みたいねー♪

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