言葉について勉強していた高校生の頃、有名な作家の先生から
「まずは辞書を読んで君の中の世界を広げなさい」
とアドバイスをもらって、早速辞書を読み始めたものの
先生の本当に意図するところも汲み取れないまま
辞書を読むことにすぐに退屈してしまった。
そして、今になってこの本と出合ってやっと本当の意味で
先生の意図していたことがしっかりと心に染み渡り、
遅まきながら天啓をもらったような大切な1冊に。
辞書を作ることは大変なことだろうとは思っていたけど
こんなにも情熱も根気も必要な、熱量の詰まった本だったとは。
辞書とは何か、辞書を作るということは、作る人たちの日々は…
すべてがほんとうにおもしろくテンポよく感動的でした。
聞きなれない単語や変わった言葉の用法があれば
すぐに用例採集カードに書き込み、その言葉のさまざまな
意味、語釈を考え、1つ1つの言葉を解釈し定義づけをし向き合う24時間。
当たり前のことだけど、今更になって辞書はたくさんの作る人と
使う人が長い年月をかけて、消したり足したり直したりを重ねて
今もなお進化し続けている終わりのない本なんだなぁと。
気長に、細かい作業を厭わず、言葉に耽溺しながらも
溺れきらず広い視野を持って辞書に携わる。
ほんとに果てしなく永遠に続く言葉の海を渡る辞書という舟。
そんな舟を作る日々の仕事と同時にこの本で進行していく人間関係と恋。
これもまた、しをんさんの言葉で読んでいくと
するするといろんなことが腑に落ちたり、合点がいったり。
真っ直ぐに突き進む人、戸惑う人、葛藤する人、
いろんなキモチを抱えながら関わることでよりいい道を力強く歩める
そんな人間関係が作られていく過程も読んでいてとても気持ちがよかった。
昔と目指す道は変わった今だけど、やっと辞書としっかりと向き合って
教えてもらうべき大切なことを受け取れるような気がしました。
今から辞書を開くのが楽しみです。
- 感想投稿日 : 2013年2月10日
- 読了日 : 2013年2月10日
- 本棚登録日 : 2013年2月10日
みんなの感想をみる