さよなら、ニルヴァーナ

著者 :
  • 文藝春秋 (2015年5月28日発売)
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感想 : 208
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これを書ききった著者を凄いとは思う。だけどなぜ、このような題材にしたのだろうかと疑問だらけ。とにかく不快。不快で仕方ない。描くのなら少年犯罪を題材にしただけの完全なフィクションにすべきだったのではないだろうか。それかここまで書くのであれば小説ではなくドキュメンタリーを描くべきだったのではないだろうか。なぜ背景も事件設定も現実に起きた全てをもとに、さらに脚色したうえで小説としてこの著者は発表したのだろうか。これを手にした遺族は救われないだろうし憤りを覚えるのではないであろうか。極めて遺憾。14才の犯罪者という設定だけじゃダメだったのだろうか。架空の話では満足できなかったのであろうか。事件背景をそのままにして使用する必要がどこにあったのだろう。酒鬼薔薇聖斗をモデルにした小説はいくつか読んだことがある。この作品は酷過ぎるうえに疑問だらけだ。
猫を切り裂き射精し、純粋無垢な幼女に手をかけ首を切り落とし射精し血を吸い祈りの言葉とともに首を置く。
実際に起きた事柄に加えなぜ著者は少年Aをアイドル顔負けの美しい容姿の設定にしたのだろうか。聖地巡礼としてファンが耐えず、ファンサイトもあり、本気で恋する女たちを描く意味は。加えて少年Aの歪んだ性はカルト宗教にはまる母親からの愛情の欠如とにおわせる設定の意味は。。

凄いとは思う。意欲的だとも思う。特にそれを題材に小説家となった女の視点は見事。だが、不快。読んでいて疲れた。読者も疲れたのだから著者はもっと苦しかったようにも思える。だけど、これを書いて著者は果たして何を伝えたかったのだろう。そしてそのモデルであり実在する酒鬼薔薇聖斗は手記を出版した。それについて著者はどう感じているのだろう。結局何も、誰も報われない。疑問だらけ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 窪 美澄
感想投稿日 : 2015年6月23日
読了日 : 2015年6月23日
本棚登録日 : 2015年4月2日

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