持ち重りする薔薇の花

著者 :
  • 新潮社 (2011年10月27日発売)
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本棚登録 : 147
感想 : 35
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丸谷才一氏最後の長編小説。

元経団連会長にして旧財閥系企業の名誉顧問である梶井のもとに、ジャーナリストの野原が訪れる。梶井は、80年代初めのニューヨークで、音楽院に通う日本人学生たち(厨川、西、小山内、鳥海)と知り合った。そして彼らが結成した弦楽四重奏団に「ブルー・フジ・クワルテット」と命名。やがて世界有数のカルテットに成長した四人には様々な軋轢が起こりはじめるが…。

旧仮名遣いで紡がれてはいるが、なめらかな文章は読みやすく、酔える。四人が繰り広げる愛憎劇は、実に人間くさく、芸術とは縁遠いように思える。しかし、確執が深まるほど、奏でられる音楽は一層美しくなるという皮肉。堪らない、けれども読むのをやめられない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2018年5月15日
読了日 : 2017年12月3日
本棚登録日 : 2018年5月15日

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