歩兵の本領 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2004年4月15日発売)
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本棚登録 : 1310
感想 : 118
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 oyajisanお勧めの一冊。9つの短編集・・・う~ん、どれも涙と笑いで読み進める。理不尽だけれども温かい世界・・これを”昭和”と呼ぶのでしょうか。
 訳ありで連れてこられて、たとえ最初は殺意を覚えるほど反発しても、いつしかそこに居場所を見つけてなじんでいく。体力的にどうしてもついていけず、そのせいで連帯責任(なんて懐かしい響き!)を取らされて。でも、誰も咎めず見捨てず、さりげない優しさで包んでくれる・・浅田次郎さんの自衛隊への愛情がなせる世界なのかも。好きだな~こんな男くさい世界。

 熱発就寝と称して、訓練にもほとんど参加せずベッドに寝ている最古参の神様・・・そんな存在を飲み込む懐の深さに、どこかホッとする。
 いつからか、そんな存在を許さない、ギシギシと音が聞こえてくるような社会になってしまったような気がする。何かしでかしたら、メディアに一斉に叩かれ、追いつめられる。どこかおかしいと思う今日この頃。
 決して、「虫の居所が悪いから殴られる」社会を容認しないけど、その裏にある愛情だったり優しさだったりに、救われる思いがした。

 「門前金融」の言葉遊びに笑い、「バトル・ライン」の男気にしびれ、「シンデレラ・リバティー」にほろりとし、「脱柵者」でじぃーーんときて、最終章「歩兵の本領」でガツンとやられました。
 

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2013年2月14日
読了日 : 2013年2月14日
本棚登録日 : 2013年2月11日

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