クラバート

  • 偕成社
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二人の仲間と一緒に浮浪生活を続けていたクラバート少年。ある日夢の中の強い呼びかけに誘われて、魔法使いの親方が運営する水車小屋で働くことになる。
14歳の少年の3年間の成長を、ラウジッツ地方(旧東ドイツ東南部からポーランド西南部)の伝説をもとに著者が再編した物語。

著者プロイスラーの「大どろぼうホッツェンプロッツ」シリーズは子供のころ夢中になって読んだ物語の一つである。悪者だけどちょっと間抜けなところもある大泥棒にクスッとさせられつつも、主人公の少年たちが魔法使いの家で過酷な労働を強いられる描写は、子供心にとても恐ろしかったことを覚えている。

この話の主人公、クラバートも、両親を早くに亡くした後、引き取られた牧師の家を早々に逃げ出し、浮浪児として過酷な環境を生きることを選択する。
水車小屋にやってきたクラバートは、最初はご飯と寝床にありつけてラッキー、という風にしか思っていない。厳しい労働でへとへとになるが、何かと気を配ってくれる職人頭のトンダや、厨房を担当するユーローなど、よい仲間にも恵まれ、魔法で力を持てることもうれしいと思っている。
しかし、自由に行動することも愛する人に会うこともできず、自分の生命さえ支配される生活に、彼本来の独立心が目覚め始める。

見習いだったクラバートが次第に自分の意志を強く持つようになり、信頼できる友人の助けと自己犠牲をいとわない女性の愛を得て親方と対決するクライマックスは、手に汗を握る展開で、ドラマチックである。また、水車小屋に来たばかりのころはトンダにフォローされていたクラバートが、2年後にはトンダと同じように見習の少年をフォローするようになっていて、彼の成長になんだかほろっとする。
残酷な描写もあるが、少年の成長譚、冒険譚として楽しく、清々しく読むことのできる物語である。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外の児童文学・SF・ファンタジー
感想投稿日 : 2021年7月7日
読了日 : 2021年7月4日
本棚登録日 : 2021年7月7日

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