療養のため西インド諸島のホテルに滞在しているミス・マープル。代り映えのない平穏無事な毎日に少々退屈気味である。そんなある日、滞在客の一人であるパルグレイヴ大佐が、過去に起きた殺人事件の犯人のスナップ写真を彼女に見せようとした矢先、急死する。問題のスナップ写真を手に入れようとしたマープルだが、写真は大佐の持ち物から消えていた。
はたして大佐は殺されたのか、そうだとしたら犯人は誰か?ミス・マープルは持ち前の推理力で事件を解明しようと動き出す。
ミス・マープルシリーズの面白いところは、生まれ育った村をほとんど出たことのない老婦人が驚くべき推理力で警察もお手上げの難事件を解決する爽快感だと思うが、一方で、捜査権限がないため誰かに捜査をお願いしないといけないこと、事件を解決するまでは存在を軽んじられがちだということが残念なポイントだな、と思っていた。そういう意味では、外国人というマイノリティながら逆にそれを生かして捜査するポアロシリーズの方がバランスが良いような気がする。
ただし本書では、ミス・マープルの能力を見抜き、協力してくれる有力者、ラフィール氏が登場する。彼はお金持ちの有力者で気難しい老人だが、ミス・マープルの頼みを聞き、新たな殺人事件を未然に防ぐために彼女に協力するのである。
ラフィール氏の存在により、マープルシリーズの弱点(私が思っているだけかもしれないが)がぐっと軽減され、ミス・マープルが積極的に活躍する本書は、シリーズの中でも躍動感があり、楽しく読むことができた。
ミス・マープルとラフィール氏のコンビはなかなか良かったのだが、二人そろっての活躍はどうも本書だけのようで、ちょっと残念である。
- 感想投稿日 : 2022年6月21日
- 読了日 : 2022年4月15日
- 本棚登録日 : 2022年6月21日
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