カリブ海の秘密 (ハヤカワ文庫 クリスティー文庫 43)

  • 早川書房 (2003年12月15日発売)
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本棚登録 : 640
感想 : 74

療養のため西インド諸島のホテルに滞在しているミス・マープル。代り映えのない平穏無事な毎日に少々退屈気味である。そんなある日、滞在客の一人であるパルグレイヴ大佐が、過去に起きた殺人事件の犯人のスナップ写真を彼女に見せようとした矢先、急死する。問題のスナップ写真を手に入れようとしたマープルだが、写真は大佐の持ち物から消えていた。
はたして大佐は殺されたのか、そうだとしたら犯人は誰か?ミス・マープルは持ち前の推理力で事件を解明しようと動き出す。

ミス・マープルシリーズの面白いところは、生まれ育った村をほとんど出たことのない老婦人が驚くべき推理力で警察もお手上げの難事件を解決する爽快感だと思うが、一方で、捜査権限がないため誰かに捜査をお願いしないといけないこと、事件を解決するまでは存在を軽んじられがちだということが残念なポイントだな、と思っていた。そういう意味では、外国人というマイノリティながら逆にそれを生かして捜査するポアロシリーズの方がバランスが良いような気がする。
ただし本書では、ミス・マープルの能力を見抜き、協力してくれる有力者、ラフィール氏が登場する。彼はお金持ちの有力者で気難しい老人だが、ミス・マープルの頼みを聞き、新たな殺人事件を未然に防ぐために彼女に協力するのである。
ラフィール氏の存在により、マープルシリーズの弱点(私が思っているだけかもしれないが)がぐっと軽減され、ミス・マープルが積極的に活躍する本書は、シリーズの中でも躍動感があり、楽しく読むことができた。

ミス・マープルとラフィール氏のコンビはなかなか良かったのだが、二人そろっての活躍はどうも本書だけのようで、ちょっと残念である。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: アガサ・クリスティー
感想投稿日 : 2022年6月21日
読了日 : 2022年4月15日
本棚登録日 : 2022年6月21日

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コメント 3件

111108さんのコメント
2022/06/21

b-matatabiさん、こんばんは。

ミス・マープルのシリーズ中で私の好きなベスト3に入ります!まだ全部読んでませんので今のところですが。

村から離れているマープルも新鮮でしたが、何よりマープルの相棒のラフィール氏。登場した頃は「何て嫌な感じの奴」だったのが、最後犯人を仕留める際の2人の活躍がとてもかっこよくて「なんだか意外にいい人だわ」と評価が反転しました。その意味でも驚く結末の本作は楽しかったです♪

b-matatabiさんのコメント
2022/06/21

この本、面白かったですよね!
私は全体的にはポアロシリーズの方が好きなんですが、『カリブ海の秘密』はお気に入りの一冊です。
やっぱりラフィール氏がいい味出していますよね。

『アガサ・クリスティー完全攻略』によると、『復讐の女神』でラフィール氏が出てくる(残念ながら亡くなっているようですが)みたいですね。
111108さんはもう読みましたか?
私はこれからなので、楽しみです。

111108さんのコメント
2022/06/21

b-matatabiさんお返事ありがとうございます!

『復讐の女神』読みましたよ!
ラフィール氏、なかなか面白い登場でした。
レビュー楽しみにしてます♪

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