『空色勾玉』に続く萩原規子さんの神話ファンタジー第二弾。今回ベースとなる神話はヤマトタケル伝説である。
巫女の一族、橘家の娘遠子と、川に捨てられていたところ橘家に拾われた小倶那。二人は三野の里で双子のように仲良く育つ。
12歳になった小倶那は、都を統治する「輝の一族」の皇子に仕えるため、遠子と離れて都へと旅立つことになる。必ず帰ってくる、と遠子に約束する小倶那だが、帰ってきた彼は「大蛇の剣」の使い手となっており、三野の里を焼き滅ぼしてしまう。
小倶那を自分の手で止めるために、遠子は橘一族に伝わる五つの勾玉を求めて旅立つ。
なかなかのボリュームだった『空色勾玉』よりさらに分厚く、読み終えることができるか心配したが、面白くて一気読みしてしまった。
ちょっとおてんばな少女の主人公、謎が多く自分では制御できない力を秘めた美少年、と基本的には主要なキャラクターが前作と似ているが、主人公の遠子が勾玉を探し求めて全国を旅する冒険が楽しく、また途中まで旅の道連れとなる同族のいけすかない象子や、美しい女性に目がなく自由気ままなプレーボーイだが、年寄りと子供をほおっておけない菅流など、脇のキャラクターが魅力的で、前作よりもぐっと惹きつけられた。
巫女の一族といってもほとんど何の能力も持たず、ただ小倶那への一途な愛だけでつき進んでいく遠子の姿は、大人の私にはまぶしすぎるほどだが、少年少女が困難に立ち向かい、正しい方向に世界を動かしていく、という王道の物語は、人生のどこかで必ず出会うべきものではないかと思う。
- 感想投稿日 : 2021年8月15日
- 読了日 : 2021年8月14日
- 本棚登録日 : 2021年8月15日
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