山田正紀、恩田陸両氏がSF小説を語る読書会。
紹介されている本のうち読んだことのあるのは、U・K・ル=グィンの『ゲド戦記』と、沼正三の『家畜人ヤプー』、恩田陸の『常夜物語』のみで、萩尾望都の『バルバラ異界』はNHKの「100分de名著」であらすじを知った程度だったが、楽しんで読むことができた。
基本的にはお題となっている作家の小説について、山田、恩田両氏が影響を受けた部分、SF小説史における位置づけなどについて対談するのだが、小説家の読書会らしく、自分だったらこのテーマをどう描くか、というアナザーストーリーについて展開してくれるのがおもしろい。ぜひいつか小説にしてほしいものである。
興味を持ったのがI・アシモフの『鋼鉄都市』と『はだかの太陽』。『鋼鉄都市』はSFミステリとして二人とも高い評価をしているが、『はだかの太陽』はバカミス扱いだ。だがそのばかばかしさがくせになるらしい。
『ゲド戦記』は3部作が発売されてから時間がたって4巻、5巻が発売されたが、前巻で足りなかった説明を補ったり上書き変更するために書かれたらしい。
私は3部作が男性の目線から描かれていたので、ル=グィンを勝手に男性作家だと思っていた。物語が一面的、という反省から書かれた4巻は、ゲドが途端に男性性をなくしていて読んだときびっくりしたが、そういうことだったのか、と納得である。
山田氏と恩田氏では、当然面白いと思ったポイントや受け取り方が異なっている。その違いをああだこうだと言い合うことで小説の多面的な魅力を引き出している。SFはそれほどなじみがないが、紹介されている本は少しずつでも読んでいきたい。
- 感想投稿日 : 2021年3月22日
- 読了日 : 2021年3月20日
- 本棚登録日 : 2021年3月20日
みんなの感想をみる