【印象に残った箇所】
・無知の知」という言葉のホントウの意味は、ソクラテスの行動原理を考えれば明らかである。 つまるところ、彼は、ただとにかく「真理」が知りたかった。そして、それを知ろうともしない世界に対して反逆したかった。そんな彼が、なぜ偉い知識人たちの無知を暴き出そうとしたのかといえば、それは彼が 無知の自覚 こそが 真理への情熱 を呼び起こすものだと考えていたからである。 当たり前の話だが、「知っている」と思っていたら「知りたい」と思うわけがない。「知らない」と思うからこそ「知りたい」と願うのである。
・さて結局、これらの話からわかることとは、リンゴやミカンなどの言語は、単純に「モノがあるから、それに対応する言語が発生した」のではなく、「区別する価値があるから、その区別に対応する言語が発生した」ということである。つまり、言語とは、「存在をどのように区別したいか」という価値観に由来して発生するものであり、その価値観の違いこそが、言語体系の違いを生み出しているのである。まぁ、ようするに、短くまとめると、 「言語体系の違い=区別体系の違い(何を区別するかという価値観の違い)」という話だ。
・そこからひるがえって言うならば……、もし、あなたに、どうしても譲れない、自分にとって一番大切な「価値のある何か」が存在するのであれば、もしあなたが死んだら、その存在はもはや存在しない。あなたが見ている「世界」とは、あなた特有の価値で切り出された「世界」であり、その「世界」に存在するものはすべて、あなた特有の価値で切り出された存在なのである。 だから、あなたがいない「世界」は、あなたが考えるような「世界」として決して存在しないし、継続もしない。 なぜなら、存在とは存在に「価値」を見いだす存在がいて、はじめて存在するからである。
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【総括
各偉人たちが哲学の対象毎に時系列に紹介されているため、哲学の体系の歴史変遷が非常にわかりやすい。内容も著者が現代人にわかりやすく、かみ砕いて表現しているため理解しやすい。
まさにタイトル通り哲学の入門にふさわしい一冊
- 感想投稿日 : 2022年10月9日
- 読了日 : 2022年10月9日
- 本棚登録日 : 2022年10月9日
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