イタリアが生んだ哲学者、ジャンバッティスタ・ヴィーコの講演をもとにした本。原題は「われわれの時代の学問方法について」。彼の考察する範囲は多岐に渡り、科学と技芸を幅広くカバーして、かつ簡潔なので読みやすい。
解説によると、ナポリ大学でおこなった演説の第6回のテーマは「堕落した人間本性についての認識は人文的強要ならびに諸科学の全分野への修得へと招き向かわせるとともに、かつまた、それらを学習する際の正しく容易にして永続的な順序を提示する」だという。このテーマが全体をよく言い表していると感じた。
具体的には、デカルトやニュートンらの数学的に記号などを使い世界をとらえようとする主張に対し、ヴィーコは人文科学的な共通感覚やレトリック、創造力を中心に据える。共通感覚を支えるものは、賢慮と有弁であるという。彼は永遠の探究者たろうとして、懐疑論(これはデカルトとはとは異なる)の姿勢を保ち続けた。後の歴史哲学にも通じる点がある。
ここからは私見だが、デジタルデバイスが生活のあらゆる場面に浸透し、デジタル的な思想が世の中を支配しているような現代こそ、ヴィーコの説く主張は枯れることなく通用すると感じた。理論偏重で答えに飛びつくのではなく、人生を通じて実践し思索し探求を続けることが肝要なのだろう。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
哲学
- 感想投稿日 : 2022年9月22日
- 読了日 : 2022年9月22日
- 本棚登録日 : 2022年9月4日
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