人類の深奥に秘められた記憶

  • 集英社 (2023年10月26日発売)
4.50
  • (17)
  • (9)
  • (1)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 260
感想 : 19
4

セネガル出身の若い作家で、ゴンクール賞受賞ということで読んでみた。
とにかく饒舌。はじめはアフリカの作家がいかに白人世界で型に嵌め込まれて扱われているかという文学論もあり、物語は進むのかと不安になったが、シガ・Dの父の語りから面白くなった。
セネガルの伝統・文化・宗教、現在の政治運動、ヨーロッパに住むアフリカ人文学者は何を書くべきかといった思想的な要素だけでなく、場所もパリ、セネガル、アムステルダム、南米と移動するし、時代は第一次世界大戦前から現在までで、複雑で広範である。語りも、語り手(現代のセネガル人若手作家ジェガーヌ)、ジェガーヌが尊敬する女性作家シガ・D、シガ・Dの口を通した父ウセイヌ、フランス人の文学研究者、ハイチの詩人の語り、と二重三重の構造もある。それをよくまとめあげたなと、その力量に関心する。
物語としても面白かった。(映画になったら文章自体の饒舌さが押さえられて、構造が視覚化されてすっきりした話になりそう。)
饒舌な語り口は好き嫌いがあるかもしれないが、一読に値する作品だと思う。
ただ、南米のマジックリアリズムに出会った時ほどの衝撃はなかった。あれは本当に度肝を抜かれたし、その語り口に夢中になったが、これは、ある意味ヨーロッパ的な理性をもって語られていた印象。アフリカとヨーロッパのハイブリッドという感じ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年1月20日
読了日 : 2024年1月20日
本棚登録日 : 2024年1月20日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする