魚住直子は、ちょっとダークな味わいの作品も書くので、こういういかにも中学生うけしそうな本でも意外に面白いかもと思ったのだが。
容姿に自信のない女の子がネットに「わたしを殺して」と書き込みするシーンから始まるので、学校に置くような本のわりにちょっと過激なスタート。
勉強はできるが学校では孤立しているイケてない女子と、勉強はできないがクラスのトップグループに属するルックスのいい女子が、雷をきっかけに中身が入れ替わってしまう。男女が入れ替わるわけではないので、性的なドキドキはなし。
イケテない女子は自分の頑なさに気づき、イケてる女子は自分の軽はずみな言動の罪に気付く。そして自分の良さを客観的に評価してもらうことで自信も持てるようになる。ちょっと道徳の教科書みたいだが、そこの書き方は、そんなに悪くない。
しかし、冒頭の「殺してくれ」メッセージの処理がつまらない。中身はイケてる女子がちょっといじられ気味の男子を好きになるのもリアルじゃない。あと、決定的にガッカリなのは、結局はみんないい子で、みんな仲良くなれたね!という終わり方。深刻な悩みはあまりない、読書経験の浅い、というかまあ、そんなに賢くないというか、幼い読者にはこれでいいのかもしれないけどね。先生も安心の結末。
中学生位の自分がイケてると思ってる女子の残酷さは、世の中を知らないだけに、語彙力がないだけに、かなり怖いところがあるし、子どもだろうが大人だろうが、気の合わない人間は必ずいる。それを描いた上で、でも、なんとかやっていこう、人生そんなに悪くないって感じに書いた方が、現実に悩みを抱えている子どもは救われるんじゃないかと思うけど。
それに、いくら容姿がいまいちでも、中学生になれば、成績トップクラスは、一目おかれるもの。地味なルックスなら先生からも信頼されやすい。逆に成績下位でおしゃれにうつつを抜かし、軽はずみな言動で人をキズつけるような子がいきなりいじめの対象になるってこともあり得る。この登場人物は友達を「黒豚」とまで呼んでるんだからその可能性は十分にある。
絵が今どきの子どもうけするものだし、挿絵もあるので、日頃あまり読まない子どもでも読みやすい。でもやっぱりマンガやゲームの方が面白いね、と思われそう。
- 感想投稿日 : 2018年5月13日
- 読了日 : 2018年5月13日
- 本棚登録日 : 2018年5月13日
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