パウゼヴァングは、残された人生を、自分が体験し、そして今後決して同じようなことを体験させてはならない、ナチスドイツ時代を書き残すことに全力を注いでいる。
『そこに僕らは居合わせた』では、様々な立場の人々を描いたが、この本では、ドイツ中央部の森林地帯、つまりドレスデンなどの都市と違って、直接空襲を受けず、田舎の人々の生活が比較的守られた場所で、戦争がどのような惨禍を引き起こしたかを丁寧に、そして周到に描いている。
すべての登場人物がリアルだが、物語の仕掛けを忘れず、読み物として最後までひきつける工夫をしているのは、やはりどうしても最後まで読んでほしいからだと思う。
主人公の父、預言者のような少年、顔をなくした男など、すべての登場人物が、必ず何らかの役割を物語の上で果たしている。
物語としてたいへん読みやすく面白いので、万人に薦められるし、映画にしてもいいと思う。いや、ぜひしてほしい。
『見えない雲』よりいい作品になると思う。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2016年11月21日
- 読了日 : 2016年11月21日
- 本棚登録日 : 2016年11月21日
みんなの感想をみる