どこまで北町貫多が西村賢太なのかは分からないが、歳を重ねるにつれ手の施しようがなくなっている。いくら私小説といえど、エンターテイメントの部分もあろうが、妙にリアリティが感じられる。
かの作者は無頼派、反リアリズムなど呼ばれ、聞こえはいいが、端的に言うと屑である。
自己正当化による暴力もさることながら、性欲のまま生きるその破滅的生活に嫌悪感があふれ出る。
それでも頁を繰ってしまうのは流石売れっ子芥川賞作家だ。青年期を書いた作(苦役列車・蠕動で渉れ、汚泥の川を)はまだ楽しめたが、ここまでくると正直しんどい。
逆に考えるとよくここまで曝け出せるなといった感想。
「一私小説書きの日乗」シリーズにもあるように、その後の彼も無頼漢であり続けていた。
ただ、今作で愛情や温もりを求めていた心証から、無頼漢といっても先は諦観があったのだろうとも思われる。
人は人に傾倒すると強くなれるものだな、としみじみ思う。悪態をついているようだが、私は彼の生き様に憧れの様な感情を抱いているし、羨ましいとも感ずる。
惜しい人を亡くしたなど無粋なことも言わない。
素晴らしい生き様であった。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2022年4月10日
- 読了日 : 2022年4月10日
- 本棚登録日 : 2022年4月10日
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