白昼の悪魔 (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-82)

  • 早川書房 (1986年4月1日発売)
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本棚登録 : 193
感想 : 9
4

 ※新訳版再読後。

ポアロシリーズはメロドラマ的なスタートから始まる事が多いが、今作でも元女優の美しい女性とスポーツマンでとても美青年が物語の主軸になる。
 舞台となる美しいリゾートホテルは描写だけでも煌びやかで、お金持ちが宿泊する。評判のホテルだ。ポアロは休暇で訪れていたが、案の定、事件を呼び寄せてしまう(笑)ホテルに宿泊する人達は個性豊かな人達が多く、こんなコミュニケーションが求められるのは嫌だなぁと現代的に感じてしまう。一癖、二癖と持っている登場人物達は、ある意味で冒頭からミスリードを誘う様な描き方もされており、結末で結局は良い人だった、悪い人だったが当然ある訳だが、少々大袈裟だろうと苦笑いしてしまった。
 ポアロと宿泊客達は漠然としているがどこと無くこのホテル内で「悪」の存在を意識しており、おかしな牧師は悪魔について語る様な有様だ。ただし間違い無く異様な空気は漂っており、冒頭、それはあらゆる男性を虜にしてしまう(タコの様だと言われており笑ってしまった。当時の人達の悪口はシリーズ通して辛辣なんだ(笑))元女優に向けられているが、彼女の死をきっかけに本当の「悪」が炙り出される。
 ポアロの彼らしさは普段より少ないかも知れないが、今回の細かい、何気ない事柄が真相に繋がっていく様はまさしく作中で述べられている様にジグソーパズルのピースの様な役割だ。彼の作品は事件が何度も起きる、第二、第三の事件が発生する事もしばしばあるが、今作では様々な部分がまとまっており、とても読みやすい作品だった。
 16歳の少女が登場人物として役割を与えられているが、当時ではこの年齢はまだまだ子供の部分が強いのだと感じた。現在の中学生くらいのイメージが受け入れやすい。感受性豊かな世代であり、事件にも関わるが、最後、一人にしてはいかんだろうと思ってしまった。こういう部分も踏まえて読者を欺こうとするのは良いが、今作はやりすぎている様で、登場人物達とポアロ達がコミュニケーションを取る場合に、全員が何かしらおかしな事をしており(笑)。少し狙いすぎだと思う。
 (今作の空気感には合っている感じだ。)
まあ、何だかんだ面白い事には変わりない。フーダニットに関しては流石のクリスティだった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年10月16日
読了日 : 2023年6月7日
本棚登録日 : 2023年6月7日

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