もののけ姫 [DVD]

監督 : 宮崎駿 
  • ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント (2011年10月17日発売)
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筋書きが素晴らしい。主人公は「事件」にいつも追いつかない。たとえそれが自身を引き裂かれざるを得ないようなものだとしても、つねに後手に回される。そして貢献しても感謝されることは少ない。むしろ「お前は必要とされていない」と言われることのほうが多い。就活生と似ている・・と思うのは私だけではないはず。

エボシの存在は奇妙だ。女性で、合理主義者で、野心家。中世でありながら男女共同参画的な社会を建設し、鉄をつくり、山を荒らし、あげくには神を殺す。しかし、誰からもかえりみられない病人をかくまう一面を「秘密の庭」に持っている。自然からも社会からも見捨てられた人々を救おうとする。まるで現代人そのものではないか。

鉄を生産し、生態系のバランスを崩したタタラ場は、それゆえに壊滅した。しかし自然は大きな犠牲(シシガミやイノシシ、森)を払って、バランスを保とうとする。そして最後に救いのような草原が残った。この宮崎さんの思想はマンガ版ナウシカから受け継がれている。ちなみに草原は生態系の中で砂漠の次に「貧しい」。

ボーダーにいる登場人物が光る。アシタカは村を追われ、タタラ場と自然界の仲介に失敗する。サンは人間ながらヤマイヌとして必死に生きようとする。どちらも「お前はいらない」と言われ続ける運命を背負っている。もがき続ける彼らに、多くの若者は勇気づけられるだろう。

アシタカとサンは共に住めなかった。しかし共に生きようと誓う。もののけは恋の物語というよりも、生き方をめぐる妥協の物語。それは恋愛というよりも、他人の生き方を肯定するという「パートナー」をめぐる物語だ。

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感想投稿日 : 2013年3月26日
本棚登録日 : 2013年3月26日

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