世界神話学入門 (講談社現代新書)

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  • 講談社 (2017年12月14日発売)
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世界の神話には、大きく二つの系統があるらしい。

『ローラシア神話』、
エジプト、メソポタミア、ギリシャ、インドのアーリア系神話
中国(日本の古事記や日本書紀の神話も)ゲルマンや北欧の神話
ストーリー性が強く、世界を無から創造する。
我々が、今神話だとおもっているもの。
現代のゲームやハリウッド映画にまで脈々と続いている。


『ゴンドワナ神話』、
それより古層の神話。
アフリカの中南部、サン、コイサン、インドの非アーリア系(ドラヴィダ)
アンダマン諸島、マレー半島のネグリト集団、
メラネシア、オーストラリア(アボリジニ)
アイヌ神話や琉球の神話
最初から世界が存在する。
天体や風雨などの自然現象、動植物と一緒に暮らしている。

おもしろいことに、遺伝子の研究からわかる、人類の分布に重なる。DNAの最新科学が神話学を立証する。(その逆も)

『「ゴンドワナ型神話とは、物語化することが至難な、というか、そもそも「物語」という営みが成立する以前に存在していたホモ・サピエンスの原型的な思考である。ローラシア型神話は神がいかに世界と人間を創造したのか、いかに人間はその生存域を拡大したのか、また人間の間にいかにして不平等が生まれていったのかを語る神話である。一方、ゴンドワナ型神話は、そもそも人間と、動植物や自然現象を区別しない時代、人間もその一員として森羅万象や動物、木々や花々とともにささやき合っていた時代の神話である。言いかえればそれは文字が要らなかった時代の神話とも言える。少々勇み足をして言えば、それは、自民族中心主義や征服者の思想には決して導かれることのない神話、すなわち現代の世界にもっとも必要とされている思考方法とは言えないだろうか。」』

『「一方、(ゴンドワナ型神話の)「張り構造」では、すべての要素が互いに互いを支え合っている、そしてどこかが欠落すれば全体のバランスが崩れる。籠を解いていってもどこにも世界の神秘などは存在しない。なぜなら、その籠そのものが世界だからだ。人間も動物も風や天体などの森羅万象も、互いが互いを頼りあい、互いが互いを参照する。そこにはどれがより大事ということはない。上も下もない。だから支配も被支配も、権力も搾取も無縁である。」

なぜか南方熊楠のマンダラを思い出す。

『「ローラシア型神話には無からの創造という特徴があった。当然、創造するのは神であり、その神は絶対的な存在である。一方ゴンドワナ型神話では、神的な存在もしばしば祖先の精霊として登場するとしても、その役割はきわめて限定的であり、もともとあった要素を秩序立てるような役割にすぎない。またこの「神」は、仕事が終われば、どこかに去って行ってしまう。そして後世の人々は、風や木のささやき、あるいは儀式の太鼓や笛の音などでその声を思い出す。祖先の精霊は別に人間たちを支配するわけではない。また人間たちの役割も、常にそれを語り、思い出すことにある。」』

琉球諸島の来訪神、東北のなまはげたち、アイヌ文化の熊祭りが頭に浮かぶ。

『「カラハリのサンもアボリジニも自分たちは旅をしている、と考えるという。そこには季節的に空間を移動しているという意味だけではなく、時間を旅しているという意味も含まれている。世界は常に流動している。川も海も、雲も風も、太陽も星も。その流れに逆らわずに生きていく。もともと人間も動物も太陽も風も一緒に暮らしていたのだから。」

すばらしい!

でもこういう考え方は、こどもは自然にやってる。
絵本の中で、人間も動物も、木もお星さんも風も、みんなふつうに、お互いしゃべってる。あたりまえのように。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史
感想投稿日 : 2018年11月15日
本棚登録日 : 2018年11月15日

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