漂流 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1980年11月27日発売)
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本棚登録 : 2376
感想 : 232
4

日本は海に囲まれている。
ということを地理的な意味でも、意識的な意味でも、
強烈に感銘した重厚な一遍であった。

江戸時代、船がシケにあって船乗りが絶海の孤島に漂着。
火山島で水が湧かない、草木もわずかの実はアホウドリの生息地、
現代、鳥島と呼ばれているところにである。
そしてサバイバル、次々と遭難仲間も増え、12年ののち、故郷に帰れるのである。

定評のある吉村氏の筆力が、壮絶に書き尽くしているのは当然ことである。

鎖国の政策が江戸時代の船乗りたちにどんな危険を与えたか、に怒りを覚え、
主人公の「長平」という人物がサバイバルに打ち勝つその人間の成長に共感する。

克明で、淡々とした吉村氏のメッセージ、
海に囲まれ黒潮の流れる太平洋に面している日本の位置を強く意識させられた。

また
この主人公の読み書きもままならない若者が、人間として成長する強さは
やればできる!という希望を与えてくれる。

閑話休題
その鳥島のアホウドリを食べることが主人公たちの命を救うのだが、
たしか、今ではそのアホウドリも絶滅の危機で、
トキのように保護繫殖の労をとっている、とドキュメンタリーで見た。
その時に食べつくしたわけではあるまいが(笑

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2016年
感想投稿日 : 2020年2月14日
読了日 : 2016年11月13日
本棚登録日 : 2020年2月14日

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