そもそも「ロシアのウクライナ侵攻」に暗澹たる気持ちになり、せめても「ウクライナの国の小説は?」と検索、もう20年以上前に『ペンギンの憂鬱』でベストセラー作家となっていたクルコフに、たどり着いたのでした。(例によって知らないことのなんとおおいこと!ゴーゴリもウクライナ出身とか)
前田和泉氏翻訳の600ページ越えの分厚い本で、複雑なれど一気読みするくらいおもしきユーモアに富んだ物語。
複雑というのは、解説にもあるがこの作家が「ロシア語で執筆するウクライナの作家」なるが故にウクライナという国の政治事情や社会情勢における立場が浮き彫りに。そしてこの小説構成の重層化(青年期、中年期、老年期のパートにわかれて章が進む)が、最初は少々ややこしいのですが、慣れてくるとそれがなおおもしろくしているのだとわかる。
語り手のセルゲイ・ブーニンという主人公、女好きで吞み助でチャラチャラしているけれども、本当は母子家庭の母親や障害のある弟思いの正直真面目な好青年で、ウクライナという国の歴史に沿って生きていく。ソ連時代から崩壊をへて建国に遭遇、大統領にまでなってしまったのに、身辺の寂寥は埋まらない…というのがストーリー。
フィクション好きなら、なるほどウクライナの複雑難儀な事情が解ろう小説だ。そう、おもしろうてかなし。主人公は普通に幸せになりたい。普通に幸せとはなんだ?国があって、食べることが出来て、住む家があって、愛する家族が泣いていないこと。人間は身の丈だけしか要求してはいけない。そうしなければ普通の幸せは来ない。
- 感想投稿日 : 2022年3月7日
- 読了日 : 2022年3月6日
- 本棚登録日 : 2022年3月7日
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