なぜ、「できる人」は「できる人」を育てられないのか?

著者 :
  • 日本実業出版社 (2005年12月8日発売)
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この本の扱っている仮説は非常にマネジメントの本質をついていると思う。

(仮説1)実は出来る人はそもそもできる人であり、努力や成長、達成という業務上で必要とされるなんらかの課題は努力して解決する/ないし出来るようになって当然という思い込みを持っている。

(仮説2)それ故に出来る人は「できない人」を見ると教えたくなるし、マネージャーに昇進した際に例えば「自分と同じようにできるようにしてあげよう」と懇切丁寧な指導を行おうとする。

(仮説3)できない人は「目標達成」が重要であることは理解しているが、マニュアルや営業同行で得られる程度の情報よりもより根源的なところ(例えば相手に電話するのに躊躇する/こんなことを取引先に言ってもいいのか等)に仕事上の悩みを抱えている。

(仮説4)「できる人」は仕事を懸命に教えようとするが、「できない人」は「そこではない」と思い、だんだんと職場の雰囲気が悪化していく。

(結論) 以上の仮説に基づき「できる人」を脱却して「伸ばす人」をめざそうではないか。

個人的には腑に落ちるところが多い。自分の経験上も「マネジメントとは管理しようとするとろくな結果をうまない」ことが多いし、多くのマネージャーが悩んでいることを方向付けしてくれているので勇気がでる。

個人的な意見をつけ加えておくと仮にマネージャーに昇進した人を程度の差こそあれ「できる人」とすると、「多くのできる人」は自分のことを「できる人と思っていない」可能性が高い。やっていることは会社の業務遂行上、当然求められること(例えば会社の売上をあげる程度)であるし、それすら悩みながらやっているのが実態であるからだ。(できるなら悩んでねーよ、というのが本音。)

そのため「できる人」と「できない人」のギャップはますます大きい。であるからこそ、思い込みを「思い込み」だと指摘する本書には価値がある。

この手の本は論調としてできる人を「良し」としてできない側を「良くない」とラベリングしてしまいがちだが、本書にはどうすれば認識のギャップを超えて組織が良くなるか、というテーマが通底しているため読んでいてギスギスしない。良書だと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: マネジメント
感想投稿日 : 2018年7月16日
読了日 : 2018年7月20日
本棚登録日 : 2018年7月16日

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