台所のおと (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (1995年8月2日発売)
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本棚登録 : 1071
感想 : 115

難しい漢字や言葉使いで読みづらいと思ったけど、面白かったです。幸田文さんの生きた時代の女の生き方、在り方がリアルに伝わってきます。短編集です。

私が好きな作品は、『台所のおと』、『濃紺』、『食欲』、『祝辞』です。

『台所のおと』 夫婦の愛の話。夫が治らない病に罹ってしまいます。妻はそれを夫に悟られないように、夫はそれに何となく気づいても妻に悟られないようにします。途中で砥と刃の話が出てきますが、まさにこの夫婦の事を言っていると思いました。砥と刃が揃って包丁が切れるようになります。どちらかが欠けてはダメです。お互いを思い合っていてジーンときました。この話で知ったのが、昔は病気の告知は男親、男兄弟、息子にするのが当たり前だったそうです。奥さんたち女性には伝えなかった。どうしてかと言うと、女性はすぐに顔に出てわかってしまったり、落ち込んでしまうから伝えなかったみたいです。女性の方がそういう時、肝が据わるのでは?と私は思うんですけど。

『濃紺』 淡い恋の話。短い話だったけど、私は一番好きです。恋と言っていいのか分からないけど、主人公の女性は貰った下駄を大事に履いて、履けなくなったらずっと大切に押入れに思い出とともにしまってました。下駄をくれた人とは、店員とお客の関係だけだったけど、そこには恋心があったと思います。

『食欲』 離婚を考えてた妻。でもそんな時、夫が病気になり、夫の弱い姿を見て優越感に浸ってしまいます。そして良き妻を演じて(私はそう感じた)ピンチを乗り切ります。イライラさせられる夫の治療費のために頭を下げて金の工面をします。私だったらどうするのかな?なんて考えてしまいます。病気が快方に向かっていくと、また同じ日常になると思うんだけど、この妻はどうするのか?やっぱり離婚してしまうのか?気になりますね。

『祝辞』 お金のトラブルに巻き込まれて、家庭がギクシャクします。そんな時に妻が他の男性に気持ちがゆらゆら揺れてしまいます。でも、踏み止まって家庭を守ります。私はこの妻を「偉い。」と褒めてしまいました。

昔も今も変わらない事や、今ではあり得ない事が知れて良かったです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2023年1月23日
読了日 : 2023年1月23日
本棚登録日 : 2023年1月23日

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