映画の見方がわかる本: 2001年宇宙の旅から未知との遭遇まで (映画秘宝COLLECTION 22)

著者 :
  • 洋泉社 (2002年8月1日発売)
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本棚登録 : 1188
感想 : 107
5

とても素晴らしい解説本だった。
映画の時代背景、込められたメッセージとその切実さが読んでいて、同時に映画を思い出し、再び感動してしまうという映画と読書の組み合わさったような体験をすることができた。
特に面白かったのは「2001年宇宙の旅」と「猿の惑星」、「タクシードライバー」、そして「ロッキー」。
うろ覚えだった映画もたくさんあり、また見なければならないなと思わせられた。
70年代に始まった映画の「革命」は80年代にはマーケティングを駆使した「製品」となってしまったと本書では書かれている。70年代の「革命」の中で様々な作品が、当時の価値観に対する抵抗を試みた。その切実な、激しいメッセージが作品の端々に宿っているのだと知ることができた。そのテーマは様々で、人種差別問題、戦争と平和、正義、自由、平等などである。そして、それらは人間は進化しているのかという疑問につながり、進歩しない人類の愚かさまで含んだ人間という存在について踏み込んだ話にまで映画を通じて語っている。
そして、人類全体の普遍的な話にまでいった後に「タクシードライバー」では、孤独な人間の、人間個人が抱えうる深い絶望の話になるが、「ロッキー」では、そこから見えるわずかな希望をつかみ取る話にもっていっている。
この本を読んでから、そうした映画の歴史を踏まえ、そこに込められた切実なメッセージを今まで以上に受け取ることができるようになった。
もう読んでいない状態には戻れなくなってしまった。
もう映画を積極的に見るしかなくなってしまった。
もう映画を一つの作品として込められたメッセージを読み取ろうとする観客になってしまった。
町山智浩の映画に対する愛情にやられてしまった。

本当に素晴らしい本です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 映画
感想投稿日 : 2014年4月13日
読了日 : 2014年4月13日
本棚登録日 : 2013年11月14日

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